環境科学会誌
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バクテリアによる活性汚泥中の重金属の蓄積
―電子顕微鏡による観察と分析―
田崎 和江石田 秀樹森山 清森 忠洋
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1992 年 5 巻 1 号 p. 57-66

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抄録

 下水処理場における活性汚泥中のバクテリアが重金属を蓄積している姿を,電子顕微鏡で直接捕らえた。活性汚泥中の球菌及びかん菌の細胞壁は,Cu,P,Zn,Fe,A1の組成を含む50-300nmの厚い被膜で被われている。重金属により自然染色された細胞壁の周囲には,結晶性の物質が生成している。X線粉末回折分析の結果,この物質は,Cu(Al,Fe)6 (OH)8 (PO4 )4 4H2 0,または(Zn,Cu)Al6 (PO4 )4 (OH)8 5H2 0の組成をもっTurquoiseまたはFaustite様のリン酸塩鉱物である。室内実験により,一次処理水に亜鉛を添加し,活性汚泥中の亜鉛量とSRT(汚泥滞留時間)の関係を検討した。亜鉛を加えないコントロールに対し,0.5-5mg/1の亜鉛を加えた場合は,SRTを15日に制御した活性汚泥中に蓄積されたZnの量が最大となった。これらの結果は,バクテリアによる生体鉱物化作用が一次処理水中の重金属を取り込み,濃縮する能力のあることを示した。

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