横浜市郊外の東京工業大学長津田キャンパスで,1989年6月9日から10日,8月27日,10月19日の計3回,降水を降り始めから約1mmずつ分取し,F- ,Br-および主要イオンを分析した。3回の降水中のF-とBr-の濃度範囲はそれぞれ0.20~53.8μg/1,0 .74~19.0μg/1であった。F-濃度は3回の降水に共通して降り始めに高く,その後大きな濃度変動を示さず減衰した。Br濃度は変動が大きく,8月27日,10月19日の降水では末期に初期濃度とほぼ同じ濃度を示した。F-/Cl-比は3回の降水とも初期に高く,末期に減少した。また,3回の降水ともF-濃度とCa2+濃度には高い正の相関(6月9日から10日:r=0 .97,8月27日:r=0.89,10月19日:r=0.99)がみられた。一方,Br-/C1-比は海水中の組成比3.4×10-3(重量比)付近で変動することが多く,Brは海塩粒子の影響を強く受けていた。しかし,6月9日から10日,10月19日の降水では,降水中期および末期にBr-/C1比の増加が見られた。NO3-と非海塩起源のBr-との間には正の相関がみられたことから,降水中のBr-には自動車交通などの石油類の燃焼による人類活動の影響が及んでいると推測された。