環境科学会誌
Online ISSN : 1884-5029
Print ISSN : 0915-0048
ISSN-L : 0915-0048
大気中の揮発性有機塩素化合物濃度の時間変動
飯田 芳男代島 茂樹落合 伸夫
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 5 巻 4 号 p. 267-277

詳細
抄録

 大気中の代表的な揮発性有機塩素化合物(クロロカーボン)である1,1,1-トリクロロエタン(メチルクロロホルム),トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン,クロロホルム及び四塩化炭素,計5種について東京都武蔵野市及び練馬区での環境濃度を測定し,それらの時間変動について考察した。前者では1989年10月~1990年8月に隔月に水,木,金の3日間,後者では1989年1月~1989年2月に1日つつ3日間それぞれ1時間ごとの測定を負イオン化学イオン化法を利用したガスクロマトグラフ質量分析法を用いて行った。その結果,1日のうちで各濃度の変動はかなり大きくかつ不規則で,各成分とも最大値と最小値に数倍から10倍以上の差があることが多く一般に冬期に高濃度の日が現れる傾向が見られることが分かった。5成分のうち最も濃度が高い1,1,1-トリクロロエタンは特に冬期の夜半から明け方において高く昼前後は低い傾向を示し,日中濃度とは2倍前後の濃度差があった。NO濃度との相関から,これは放射冷却による逆転層の影響を受けている可能性が示唆された。また成分濃度間では1,1,1-トリクロロエタン,トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレン問で相関が見られ同種の発生源からの寄与が示唆された。各種気象条件と成分濃度間の相関は一般に低かったが,一定風の時だけを考えると各成分濃度間の相関が高くなる場合があることや風速が濃度に大きな影響を及ぼしていることから風の影響は明らかであった。

著者関連情報
© 環境科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top