環境科学会誌
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わが国における酸性雨の実態
―降水の観測網の構築―
藤田 慎一高橋 章西宮 昌
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1994 年 7 巻 2 号 p. 107-120

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抄録

 電力中央研究所では,1987年10月から1990年9月の3年間にわたって,全国規模で酸性雨のモニタリングを行った。この調査のおもな目的は,酸性物質の濃度や沈着量の実態を把えるとともに,物質輸送や環境影響を検討するために必要な基礎データを得ることである。 試料の採取地点は,気候条件の代表地点とバックグラウンドの代表地点の2種類からなる。前者は陸域を15の気候区に分け,降水量,地形,発生源からの距離などに一定の基準をおいて,各気候区内に1地点ずつ計15地点を選んだ。後者は本土周辺の島しょのなかで,気象官署をもつもののなかから5地点を選んだ。ウェットオンリー型の降水採取器を用いて採取した試料は,旬単位で回収して主要成分の化学分析を行い,確定した分析値をデータベース化した。 本報告は,観測網を展開するに先だって行った検討の内容をまとめるとともに,日本列島を対象に硫黄化合物の輸送と収支を評価するうえで,これらの観測データがもつ妥当性について考察を加えたものである。

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