環境科学会誌
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7 巻, 2 号
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  • 南 佳典, 高橋 啓二
    1994 年 7 巻 2 号 p. 91-98
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     関東・甲信地方におけるスギの衰退原因として重要視されている大気二次汚染物質が,スギ樹幹着生蘚苔・地衣類の生育にどのような影響を与えているかを確認するために,同地方においてオキシダント濃度の高い地域と低い地域でそれぞれ降水量の多い地域と少ない地域に分け,その4地域に調査地点を設定し,着生蘚苔・地衣類の種組成および植被率を調査した。さらに,環境条件として年降水量およびオキシダント指数のほかに,樹皮のpHや粗度を測定した。その結果,樹皮pHは全体に低く酸性化を示した。また,樹皮の粗度はいくつかの調査地点間で差が認められたが,今回の場合において着生蘚苔・地衣類の分布を左右している要因であるとは考えられなかった。今回観察された種組成の分布・生育状況から,全体的に着生蘚苔・地衣類の分布はオキシダント指数が高くかつ降水量が少ない地域でもっとも少なくなることが確認され,また降水量が少ない地域においてもオキシダント指数が低い場合には分布量が増加する傾向にあることも確認された。これらの結果は関東・甲信地方におけるスギの衰退分布とほぼ類似するものとなった。
  • 鈴木 栄二, 姚 水良
    1994 年 7 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     硫酸に浸漬後液切りした活性炭は空気中のNO2を常温常圧でほぼ全量NOに還元した。このNO2還元能力は反応継続時間(290時間)を通じて転化率100%であり,さらに長時間の還元能力継続が期待される。NO290ppbを含む空気1m3/hを290時間以上連続的に処理してNO2を全量NOに還元するために要する酸処理活性炭量は約6gであった。 酸処理しない活性炭はNO2還元力は低いが,NO2-およびNO3-への変換を伴うと思われるNO2捕捉の能力を示した。しかしこの捕捉能力は反応時間とともに減少し,50時間でほほ消滅した。 活性炭繊維も硫酸処理によりNO2還元能力が大幅に増強されたが,約50時間の継続使用で還元力は半減した。 酢酸処理した活性炭はNO2還元能力は低いが強力なNO捕捉能力を持ち,総NOxの削減に有効であった。 これらの酸処理活性炭の燃焼暖房中の居住空間のNO2削減への応用を検討するとともに,活性炭と酸の共存下のNO2還元反応機構についても考察を加えた。
  • ―降水の観測網の構築―
    藤田 慎一, 高橋 章, 西宮 昌
    1994 年 7 巻 2 号 p. 107-120
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     電力中央研究所では,1987年10月から1990年9月の3年間にわたって,全国規模で酸性雨のモニタリングを行った。この調査のおもな目的は,酸性物質の濃度や沈着量の実態を把えるとともに,物質輸送や環境影響を検討するために必要な基礎データを得ることである。 試料の採取地点は,気候条件の代表地点とバックグラウンドの代表地点の2種類からなる。前者は陸域を15の気候区に分け,降水量,地形,発生源からの距離などに一定の基準をおいて,各気候区内に1地点ずつ計15地点を選んだ。後者は本土周辺の島しょのなかで,気象官署をもつもののなかから5地点を選んだ。ウェットオンリー型の降水採取器を用いて採取した試料は,旬単位で回収して主要成分の化学分析を行い,確定した分析値をデータベース化した。 本報告は,観測網を展開するに先だって行った検討の内容をまとめるとともに,日本列島を対象に硫黄化合物の輸送と収支を評価するうえで,これらの観測データがもつ妥当性について考察を加えたものである。
  • 江 耀宗, 李 喬木, 松本 聰
    1994 年 7 巻 2 号 p. 121-128
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー

    寒冷地域に属する中国東北部の各種水田土壌及びそれぞれに対応する畑土壌を用いて,水田土壌化作用からみたメタン生成過程を解明するために,室内インキュベーション実験を行った。
    その結果,水田土壌の種類によって,メタン生成パターンは異なり,メタン生成量に大きな差異がみられた。メタン生成量は湿草地土型水田土・レシベ土型水田土>暗褐色森林土型水田土>黒色土型水田土の順であった。
    黒色土型水田土,レシベ土型水田土,暗褐色森林土型水田土のメタン生成量はそれぞれに対応する畑土壌よりも多かったが,湿草地土型水田土のメタン生成量はその畑土壌よりも少なかった。このことから,メタン生成量は土壌有機物組成に関係していると考えられた。
    水田土壌のメタン生成量は有機物含量,遊離形腐植割合,遊離形腐植酸割合および二酸化炭素生成量と正の相関関係を示した。
  • 前田 高尚, 太田 幸雄, 村尾 直人, 溝口 勲, 小林 弘幸
    1994 年 7 巻 2 号 p. 129-137
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    Molecular diffusion sampler, which does not require a power source and is produced at low cost, is good for simultaneous measurements at several places. We measured the concentration and distribution of SO2 and NO2 in Sapporo city in the summer and winter of 1988 using the molecular diffusion samplers re-modelled to tolerate the temperature below 0°c. Samplers were set up in 50 locations and included 6 air pollution monitoring stations where automatic measuring instruments were used by the standard method to adjust the molecular diffusion samplers. The calibration curve and the distribution of volume of gas sampled at each location showed the error range of measurements made by the molecular diffusion samplers was 6-8 %. The concentration maps of this measurement obtained at ground level showed high concentrated SO2 around the center of the city and over the industrial areas, and NO2 appeared along the main truck roads narrowly and highly concentrated. Regard ing the seasonal changes, SO2 concentration scarcely changed but NO2 concentration in the whole area doubled in winter. This is believed to be caused by SO2 and NO2 emissions at different heights combined with the condition of boundary layer at nighttime in winter.
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