抄録
住民による環境の主観評価構造をショケ積分モデルを用いて分析する。ショケ積分はルベーグ積分を拡張した積分法であり,重みに加法性が成り立たない場合の評価モデルとして利用することができる。ファジィ測度で表される複合評価項目の重みを直接同定し,個別評価項目間の相互作用を陽に表現して総合評価モデルを構成する。データは東京都環境保全局が平成3年2月に実施した「第2回東京都生活環境選好度調査」を用い,凸2次計画問題を解いてファジィ測度を同定する。分析の目的は,想定した総合評価モデルの枠組みという制限の中で,「環境評価における地域の個性」と「個別評価項目間の相互作用」を明らかにすることである。また,順序尺度で与えられるデータの取り扱い,同定されたファジィ測度で表現される個別及び複合評価項目の重みの解釈について議論する。分析の結果,単独の個別評価項目の重みは無視できるほど小さいが,地域の特徴に依存する2ないし3の項目を同時に考慮すれば,総合評価値のほとんどが説明できることが明らかになった。