日本顎口腔機能学会雑誌
Online ISSN : 1883-986X
Print ISSN : 1340-9085
ISSN-L : 1340-9085
原著論文
聴覚刺激が味覚機能に及ぼす影響 -甘味と塩味について-
草野 寿之奥津 史子松川 高明豊田 有美子根来 理沙頼近 繁濵坂 弘毅眞木 信太郎遠藤 舞松井 藍有美大川 周治
著者情報
キーワード: 聴覚刺激, 純音, 音楽, VAS
ジャーナル フリー

2013 年 19 巻 2 号 p. 145-156

詳細
抄録
本研究の目的は,純音ないし音楽による聴覚刺激が味覚機能,特に甘味と塩味に対する味覚の感受性に及ぼす影響を明らかにすることである.
 実験1では,被験者として健常有歯顎者22名を選択し,純音が甘味および塩味に対する味覚閾値に及ぼす影響について検討を行った.聴覚刺激に用いた被検音は10Hz,4,000Hz,20,000Hzの3種類の純音とし,音の大きさは50dBに設定した.味覚閾値の検査に用いる味質は甘味(スクロース)と塩味(塩化ナトリウム)の2種類とし,各味質の濃度は0.005M,0.010M,0.050M,0.100Mとした.聴覚刺激の負荷は15分間とし,味覚閾値の検査は全口腔法を用いた.
 実験2では,被験者として健常有歯顎者22名を選択し,音楽が甘味および塩味の味覚に及ぼす影響についてVASを応用して検討を行った.聴覚刺激に用いた被検音には,3種類の音楽(1)癒しのモーツァルトBEST,(2)refine 身近にできる音楽療法,(3)究極の眠れるCD を用いた.味覚閾値の検査は実験1と同様に行い,さらに自覚した味の強さをVASによりスコア化し,味覚の感受性として評価した.また,今回用いた音楽の嗜好に関するアンケート調査を同一被験者に行い,音楽刺激前と後との間における味覚VAS値の差を嗜好別に算出し,音楽の嗜好が味覚の感受性に及ぼす影響についても検討した.
 その結果,純音による聴覚刺激では味覚機能への影響は認められなかったが,音楽による聴覚刺激では味覚機能,特に甘味における味覚の感受性に影響を及ぼすことが示唆された.さらにその音楽に対する嗜好は甘味における味覚の感受性に影響を及ぼすことが示唆された.
著者関連情報
© 2013 日本顎口腔機能学会
前の記事 次の記事
feedback
Top