日本顎口腔機能学会雑誌
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最新号
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総説
  • 桑島 幸紀
    2026 年33 巻1 号 p. 1-10
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/04
    ジャーナル フリー

    抄録 閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea: OSA)は,睡眠中の上気道閉塞により無呼吸・低呼吸,酸素飽和度低下および覚醒反応を生じる疾患であり,心血管疾患や代謝性疾患など全身疾患との関連が指摘されている.OSAの危険因子として肥満は重要であるが,日本人を含むアジア人では,肥満度が低くてもOSAを発症することがあり,顎顔面形態の関与が注目されている.本稿では,レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いた本邦におけるOSA受療実態,肥満症患者に対する腹腔鏡下スリーブ状胃切除術後の検討,ならびに顎変形症患者における顎顔面形態と睡眠呼吸機能との関連について概説した.NDB解析ではOSA受療者数は増加傾向を示したが,推定有病者数と比較して受療者数は少なく,歯科でのOSA診療は限定的であった.肥満症患者においては,減量後もskeletal Class IIを呈する症例でOSAが残存しやすい可能性が示唆された.また,顎変形症患者ではskeletal Class II群でskeletal Class III群より無呼吸低呼吸指数が高く,下顎後退の程度がOSA重症度に関与する可能性が示唆された.OSAは肥満のみならず,顎顔面形態および上気道軟組織形態が複合的に関与する多因子性疾患であり,歯科医師による顎顔面形態の評価は,OSAの早期発見,医科歯科連携および個別化治療の推進に重要であると考える.

原著論文
  • Okayasu Ichiro, Tsuiki Satoru, Wake Hiroyuki, Sumi Tadateru, Momota Yo ...
    2026 年33 巻1 号 p. 11-17
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/04
    ジャーナル フリー

    Abstract: Burning mouth syndrome(BMS)is a chronic orofacial pain condition that still lacks clear diagnostic signs and has no well-established and effective therapeutic protocols. It has been reported that BMS is associated with neuropathic and/or psychogenic factors. If psychological factors are involved in BMS, and if part of its etiology could be considered a nociplastic pain that is neither nociceptive nor neuropathic pain, it is reasonable to assess the state of the autonomic nervous system in addition to the somatic sensory nerves. Therefore, we focused on the light reflex as an autonomic function. In this study, we used a pupillometer as a potential new objective testing method for autonomic function and assessed the effect of cognitive-behavioral therapy-informed counseling(CBT-informed counseling)in patients with BMS. The subjects were eleven middle aged and elderly female patients(average age 62.5±12.8 years, ranges 50-85 years)who sought treatment in Nagasaki University Hospital Oral Pain and Liaison Clinic for burning sensation of the mouth and/or the tongue during 2024 and -2025. Vital signs(blood pressure and pulse rate), pain intensity assessed by the numerical rating scale(NRS)and multiple parameters recorded by the pupillometer were measured at the start and end of the CBT based counseling, and compared afterwards. After the CBT-informed counseling for patients with BMS, their blood pressure and pulse rate dropped, NRS decreased and a few parameters of the pupillometer changed significantly(p<0.05). These findings indicated that CBT-informed counseling affected the parasympathetic-sympathetic balance of patients with BMS and their psychological conditions, supporting that a pupillometer could be useful to assess autonomic function objectively. Of course, a controlled study is needed to evaluate the strict therapeutic effect of the CBT-comprehensive approach. As a pilot study, we introduce a new tool and provide an example of objective assessment for patients with BMS.

学術大会抄録
  • 井上 富雄, 森本 かえで, 瀬川 大, 尾形 祐己, 天羽 崇, 真田 依功子, 松本 恭子, 関 道子, 木村 真菜, 野口 由里香
    2026 年33 巻1 号 p. 18-19
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/04
    ジャーナル フリー

    Ⅰ.目  的

     超高齢社会の我が国において健康寿命の延伸は喫緊の課題であり,その鍵となるフレイル予防として,①栄養バランスのとれた食事,②適度な運動,③社会参加の3つの生活習慣が重要視されている.特に,栄養バランスのとれた食事を実践するためには,食物を適切に咀嚼・嚥下できる健常な口腔機能が不可欠である1).加齢に伴う口腔機能の低下は自覚症状なく潜在的に進行することが多く,食べこぼしや些細な噛みづらさといった初期症状が見過ごされがちである.そのため,機能が大きく低下する前から自身の口腔状態を把握し,機能低下の兆候を早期に捉えて対策を講じることが,生涯にわたる口腔機能の維持に極めて有効であると考えられる.

     そこで本研究では,多くの人が日常的に食する市販製品を活用し,誰もが簡便に自身の咀嚼能力を把握できる方法の策定を目指した.今回は,健常成人と嚥下機能に問題のない高齢者について,魚肉ソーセージを咀嚼した際の嚥下までの咀嚼回数に影響する要因の検討を行った.

  • 相澤 知里, 真柄 仁, 板 離子, 笹 杏奈, 辻村 恭憲, 井上 誠
    2026 年33 巻1 号 p. 20-21
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/04
    ジャーナル フリー

    Ⅰ.目  的

     咀嚼嚥下過程において,舌は食品物性などの末梢環境に応じた精緻な運動を行って食塊形成,移送を担う.これまで咀嚼嚥下時の舌運動は,舌運動様相の観察,舌表面マーカー画像解析,舌圧センサー口蓋接触圧の測定等,様々な方法で評価されてきたが,舌筋活動を定量的に評価した報告は少ない.本研究では,吸引型電極を利用した舌運動記録を用いて,異なる物性の米飯咀嚼時における咀嚼筋および舌筋筋活動の比較,検討を行った.

  • 高橋 信道, 小野 高裕, 川本 章代, 根津 理沙子, 島田 明子, 髙橋 一也
    2026 年33 巻1 号 p. 22-24
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/04
    ジャーナル フリー

    Ⅰ.目  的

     高齢者における咀嚼機能の低下は摂取食品の多様性を低下させ1),栄養摂取の変化を介してフレイルやサルコペニアの進行を助長することが懸念されている.また,食生活の変化により日常の食事における咀嚼回数が減少し,そのことが咀嚼機能の低下に影響を及ぼすため,噛みごたえのある食品を意識的に摂取する必要性が強調されている2)

     咀嚼機能が低下すると,咀嚼回数の増加や咀嚼時間の延長など咀嚼行動における代償が必要と考えられる.しかし,客観的に測定した咀嚼機能(咬断能力)と咀嚼回数の間には相関関係が認められなかったとの報告もある3).このように,咀嚼機能と咀嚼行動との関係には,未解明の部分が多く存在する.

     そこで本研究は,咀嚼機能が噛みごたえ(テクスチャー)の異なる食品に対する咀嚼行動の調整に及ぼす影響を解明することを目的として,まず健常有歯顎者を対象に,噛みごたえの異なる食品に対する咀嚼行動パラメータの比較を行うと共に,口腔機能との関連性について分析した.

  • 井口 陽介, 中富 千尋, 小野 堅太郎
    2026 年33 巻1 号 p. 25-26
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/04
    ジャーナル フリー

    Ⅰ.目  的

     食品嗜好には,味や香りだけでなく物理的性質(食品テクスチャー)も大きく影響することがよく知られている.また,咀嚼して唾液と混和し,適切な食塊物性を形成することで安全な嚥下運動が行われていることから,口腔内での物性認知機能は摂食嚥下に欠かせない感覚である.しかしながら,食品テクスチャーに関する研究は,物性試験やヒト官能試験を行ったものばかりであり,動物実験による研究は非常に限られている.そのため,口腔内テクスチャー感覚における神経系メカニズムの解明が非常に遅れているのが現状である.

     我々はラットを用いたテクスチャー認知実験を新たに開発することに成功し,粘性,粒子性,硬弾性の認知評価が可能となった.本研究では,ラットよりも遺伝子改変動物資源の豊富なマウスに対して新規テクスチャー認知実験系を適用した.マウスはラットと同じげっ歯類であり,容姿もよく似ているが,湿地を好むラットと乾燥地域に強いマウスでは食生の違いがあるため,異なるテクスチャー識別能を有する可能性がある.

  • 渡邊 亮友, 大倉 一夫, 鈴木 善貴, 谷脇 竜弥, 松香 芳三
    2026 年33 巻1 号 p. 27-28
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/04
    ジャーナル フリー

    Ⅰ.目  的

     睡眠時ブラキシズム(Sleep Bruxism: SB)は,睡眠中に生じる咀嚼筋の持続的またはリズム性の筋活動(Rhythmic Masticatory Muscle Activity: RMMA)である1).SBは歯の破折,顎筋の疲労や疼痛などの原因になることが知られている.

     しかしながら,その診断において,患者が訴える自覚症状や睡眠中に認められる異常音が用いられることが多い.これらは客観的で定量的な指標としては不十分である.そのため,診断の感度や特異度は十分に高いとは言えない.

     客観的な診断にはポリソムノグラフィー(PSG)や簡易型筋電計などの測定装置を用いた終夜にわたる検査が必要である.PSG検査は高精度であるが,その実施には設備や環境の制約が大きい.簡易型筋電計は簡便であるが,測定環境の影響を受けやすいとされている.

     SBの為害作用の一つである筋疲労は,筋電図(Electromyography: EMG)の周波数特性に反映されることが明らかにされている2).特に周波数帯域の低下(低周波化)は筋疲労の有効な指標であると広く報告されている.これらの手法を応用することで,睡眠前および起床後における咬筋の疲労を定量的に評価できる.このことから,終夜の筋電図測定を省略しても,咬筋の疲労を定量的に評価することで,簡便かつ高精度なSB診断が実現できる可能性がある.

     そこで本研究では,SBをより簡便かつ定量的に評価する方法を確立することを目的とし,RMMAの頻度(RMMA Index)と睡眠前後にみられる咬筋疲労の程度(周波数分布の低周波帯への偏り)との相関を検討した.

  • 江橋 葵, 飯田 崇, 岩田 好弘, 小見山 道
    2026 年33 巻1 号 p. 29-30
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/04
    ジャーナル フリー

    Ⅰ.目  的

     臨床で開口障害,非歯原性歯痛等を引き起こす認められる咬筋の筋・筋膜疼痛が生じるメカニズムは未だ解明がされていない1).過去の研究では,グルタミン酸注射によって引き起こされる実験的な咬筋痛が,咬筋の圧痛の感受性に影響を与えることが実証されているが,実際の咬筋の筋・筋膜疼痛が感覚機能へ及ぼす影響は,咬筋の筋・筋膜疼痛が生じるメカニズムを解明するためにさらなる検討が必要となる.

     睡眠時ブラキシズムは,睡眠中に発生するクレンチングやグラインディングといった非機能的な咀嚼筋の筋活動と定義されている.睡眠時ブラキシズムは咀嚼筋の筋・筋膜疼痛を引き起こす一因と示唆されているが,その関係性は解明されていない.すなわち,睡眠時ブラキシズムが咀嚼筋の感覚機能へ及ぼす影響を解明することは,両者の相関を解明する上で有用な知見になると考えられる.

     German Research Network on Neuropathic Pain(DFNS)は,体性感覚の異常を検出するための13の定量的感覚検査(QST)を推奨している2).Hayakawaらは,QST測定を用いた実験により咬筋の筋痛は深部の咬筋における感覚の変化のみではなく,咬筋上の皮膚における知覚の変動にも関与する可能性があることを示唆した3).しかしながら,持続的な咀嚼筋筋活動を生じる睡眠時ブラキシズムの習癖が咬筋の感覚機能に及ぼす影響を検討した報告は認めない.睡眠時ブラキシズムの習癖と咀嚼筋の筋・筋膜疼痛の両因子が咬筋の感覚機能に及ぼす影響を解明することは,咀嚼筋の筋・筋膜疼痛が生じるメカニズムを解明する一助になることが期待される.

     本研究では,被験者を睡眠時ブラキシズムの習癖,咬筋の圧痛にて4群間に分類し,QSTを用いて咬筋表面における感覚機能を比較,検討した.

  • 佐藤 理加子, 天埜 皓太, 堀 一浩, 谷口 裕重
    2026 年33 巻1 号 p. 31-33
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/04
    ジャーナル フリー

    Ⅰ.目  的

     摂食嚥下障害のある患者に対し,誤嚥を予防するため,液体にとろみを付加することが推奨されている.しかし,とろみの濃度が濃くなると粘度が高くなり,流動性が低下するため,誤嚥のリスクは低減されるが,咽頭残留量が増加する.そこで,エスプーマと呼ばれる調理法に着目した.エスプーマとは,乳化剤で均質化した液体に専用のボトルを用いて亜酸化窒素ガスを添加し,泡状に仕上げる調理法である.本研究では健常若年成人および嚥下障害患者を対象とし,とろみ付き液体にエスプーマ処理を施し,物性を変化させることが,摂食嚥下機能に与える影響を比較検討することを目的とした.

  • Khalili Hala Al, 田中 恭恵, 伊藤 有希, 佐藤 萌恵, 安部 美奈子, 服部 佳功
    2026 年33 巻1 号 p. 34-35
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/04
    ジャーナル フリー

    Ⅰ.Introduction

     Texture modification(TM)is widely employed as an intervention to support oral intake in individuals with compromised eating functions due to various underlying conditions. However, standardized methods and criteria for determining the appropriate level of TM remain insufficiently defined.

     One promising strategy for establishing a system to recommend optimal TM levels involves identifying key determinants that influence appropriate texture selection. These determinants can then serve as input variables for the development of a predictive system-using statistical modeling or artificial intelligence-that outputs the recommended texture level.

     As a preliminary step toward the development of such a system, this study aimed to identify potential determinant factors associated with TM levels in foods habitually consumed by residents of a special nursing home for the elderly. Relevant factors were extracted from routine facility records and oral function assessment data that are hypothesized to be associated with the required TM level.

  • 佐野 吏香, 重田 優子, 熊澤 龍起, 荻原 久喜, 小島 勘太郎, 木原 琢也, 井川 知子, 平林 里大, 重本 修伺, 小川 匠
    2026 年33 巻1 号 p. 36-37
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/04
    ジャーナル フリー

    Ⅰ.目  的

     摂食嚥下障害は高齢者に多くみられ,運動機能の障害によって栄養状態や全身の健康に影響を及ぼす.咀嚼・嚥下に関わる口腔機能の維持・回復は,QOLの向上と健康寿命の延伸に直結する補綴治療のセカンダリーエンドポイントである.一般に,摂食嚥下は複数の器官が協調して働く複雑なプロセスであり,従来は食塊の通過経路に基づき4相に分類され,嚥下造影検査(VFSS)や内視鏡,筋電図,動画MRI(cine-MRI)など多様な方法で検討されてきた.これらの方法は,それぞれ得意とする観察対象がある一方で,軟口蓋や喉頭蓋など軟部組織の三次元的挙動を詳細に捉えることは困難であった.本研究の目的は,320列4D-CT情報を用いた新規解析法により,嚥下過程に関与する顎口腔器官の三次元的な運動様相を可視化し,その嚥下様相を検討することにある.

  • 重本 修伺, 伊藤 崇弘, 相澤 知里, 山田 果歩, 谷脇 竜弥, 湯本 華帆, 小島 勘太郎, 島田 崇史, 荻原 久喜, 小川 匠
    2026 年33 巻1 号 p. 38-39
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/04
    ジャーナル フリー

    Ⅰ.目  的

     ヒトの形態と機能を生体外で再現する方法に咬合器がある.しかし,従来の咬合器では,ヒトのすべての顎運動を再現できない.「生体の口腔に勝る咬合器はない」といわれるが,顎口腔の形態と機能を正確にデジタル化できれば究極のVirtual咬合器が得られる.鶴見大学小川教室では,個々の患者のモデルを仮想空間に生成し,そこに疾患,障害や現症を再現してAI技術で分析することで患者個々に最適な治療法の決定や予後予測を可能とする究極のVirtual咬合器である「歯科デジタルツイン」の構築を目指している.顎運動測定器は歯科デジタルツインの主要構成要素の一つである.

     本研究では,第13回顎口腔機能セミナーのワークショップ①で取得した資料をもとに顎運動測定器の測定法ならびに得られた顎運動データおよび歯列形態データの可視化技術を用いた顎機能評価方法について紹介する.

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