日本顎口腔機能学会雑誌
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ガム軟化前後における咀嚼運動
―運動経路と運動リズム―
志賀 博小林 義典王 孝栃倉 純
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1994 年 1 巻 1 号 p. 45-55

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抄録
咀嚼運動におけるガム軟化前後間の機能的差異を明らかにする目的で, 独自のシステムを用いて正常者10名のガム軟化前とガム軟化後における咀嚼開始後第5ストロークからの10ストロークの運動経路と運動リズムを分析した.結果は, 以下の通りである.
1.開口量と咀嚼幅は, ガム軟化前の方がガム軟化後よりも大きく, ガム軟化前後間に有意差が認められた.
2.開口時側方成分, 閉口時側方成分, 垂直成分の各SD/0Dは, ガム軟化前の方がガム軟化後よりも大きく, ガム軟化前後間に有意差が認められた.
3.中心咬合位から下方1mmに閾値設定した場合の咬合相時間の平均は, ガム軟化前の方がガム軟化後よりも短縮していたが, 開口相時間, 閉口相時間, cycle timeの各平均は, ガム軟化前の方がガム軟化後よりも延長した.
4.中心咬合位から下方2mmに閾値設定した場合の咬合相時間の平均は, ガム軟化前とガム軟化後とがほぼ同じ値を示したが, 開口相時間, 閉口相時間, cycle timeの各平均は, いずれもガム軟化前の方がガム軟化後よりも延長した.
5.中心咬合位から下方3mmに閾値設定した場合の開口相時間, 閉口相時間, 咬合相時間, cycle timeの各平均は, いずれもガム軟化前の方がガム軟化後よりも延長した.
6.中心咬合位から下方1mm, 2mm, 3mmに閾値をそれぞれ設定した場合のcycle timeの各変動係数は, いずれもガム軟化前の方がガム軟化後よりも大きく, ガム軟化前後問に有意差が認められた.
7.以上のことから, 正常者のガム咀嚼時の咀嚼運動は軟化前の方が軟化後よりも垂直的かつ側方的な運動量が大きく, また運動リズムが不安定であり, ガム軟化前後間には機能的差異のあることが明らかになった.
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