日本顎口腔機能学会雑誌
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顎関節音に関する臨床的研究
―頭蓋下顎機能障害患者の顎関節雑音の定量的評価―
志賀 博小林 義典中島 邦久三輪 雅彦
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1995 年 2 巻 1 号 p. 11-18

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抄録

頭蓋下顎機能障害 (CMD) 患者における顎関節音の性状を客観的に評価する目的で, 可聴音を有するCMD患者20名 (A群) , 雑音を自覚し, 術者が触知できる音を有するCMD患者20名 (B群) , 雑音を自覚せず, 術者が触知できる音を有するCMD患者20名 (C群) , 正常者40名 (D群) について, 開閉口運動時の顎関節音をコンタクトマイクロフォンで記録後, 周波数分析を行い, 被験者群間で比較し, 以下の結論を得た.
1.CMD患者群のパワースペクトルは, A群, B群では100Hz以上の帯域にも周波数成分の強調がみられたが, C群では100Hz以下に周波数成分の強調がみられる者が多かった.また, A群, B群, C群の川頁に高周波成分の減少が認められた.他方, D群のパワースペクトルは, ほぼ100Hz以下に限定されたパターンを示し, 周波数成分の強調がみられる者が少なかった.
2.パワースペクトルの累積100%値と累積80%周波数値は, A群が最も大きく, 以下B群, C群, D群の順に小さくなった.累積100%値では, A群とB群との間, C群とD群との間を除く他のすべての各2群間に, 累積80%周波数値ではすべての各2群間にそれぞれ有意差が認められた.
3.以上のことから, 顎関節音のパワースペクトルのパターン, 累積100%値, 累積80%周波数値の分析は, CMD患者の顎関節雑音の性状の違いを定量的に評価できることが示唆された.また, これらの3指標のうち, 累積80%周波数値は, 特に有効な指標となることが示唆された.

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