抄録
本研究はクレンチング時の咀嚼筋活動の対称性を評価するための非対称性指数 (Asymmetry Index, A.I.) を応用し, 交叉咬合を有する小児の咬合状態と咀嚼筋A.I.との関係について検討を行ったものである.被検児は本学小児歯科外来に来院し交叉咬合を認めた小児17名 (男子7名, 女子10名, 平均年齢7歳6カ月) を対象とした.そして左右側頭筋および咬筋活動よりA.I.を算出し検討を行い以下の結論を得た.
1.被検児17名全員に早期接触が認められ, 早期接触部と咬合偏位側との間に一致が認められた.
2.側頭筋A.I.は偏位側が優位になった者12名, 反対側が優位になった者5名と偏位側側頭筋の活動が大きくなる傾向がみられ, また咬筋は逆のパターンを示すものが多くみられた.
3.咬筋活動を, 偏位側優位群と反対側優位群に分け検討した結果, いずれもA.I.と側方偏位量との間に相関が認められた.
以上の結果より, 交叉咬合による咬合の偏位はクレンチング時に左右咀嚼筋活動のバランスに影響を及ぼしていることが明らかとなり, 咀嚼筋活動左右バランスを非対称性指数で検討することは有効であることが示唆された.