抄録
本研究の目的は乳歯列小児の咀嚼運動, 特に咬合相の特徴を明らかにすることである.被験者は乳歯列を有する小児20名, 永久歯列を有する成人女性32名である.三次元6自由度の顎運動測定装置を用いて, 各被験者のガム咀嚼運動を計測した.ガム咀嚼運動における一連の運動はそれぞれのサイクルに分割し解析を行った.成人においてはいわゆるGrinding typeが多く認められたが, 小児ではChopping typeが多かった.また小児では30%以上のサイクルが閉口路より開口路の方が側方運動成分の多い, 逆サイクルであった.運動経路については成人に比べ, 小児は前後への動きが大きく, 側方成分が小さい傾向が認められた.また小児では閉口路より開口路に側方成分が多いと考えられた.これら小児の特徴には歯列, 顎関節, 咀嚼筋そして神経筋機構の成長発育が関与しているものと思われた.