日本顎口腔機能学会雑誌
Online ISSN : 1883-986X
Print ISSN : 1340-9085
ISSN-L : 1340-9085
ヒト外側翼突筋上頭・下頭の関節頭並びに関節円板の運動に対する機能的役割
平場 勝成
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 9 巻 2 号 p. 141-151

詳細
抄録

筋活動に運動の速度成分並びに加速度成分の影響が及ばないように配慮した, 段階的な噛みしめ及び段階的開閉口運動において, ヒト外側翼突筋上頭・下頭の筋電図を同時記録し機能的役割を検索した.上頭は咬筋・側頭筋と活動時期がほぼ同じで, 閉口筋と極めて類似した活動を示した.上頭は比較的弱い咬合力レベルの時に急激に筋活動が上昇し, 以後頭打ちとなって最大咬合力付近では飽和する傾向がみられたのに対し, 咬筋・側頭筋は逆に最大咬合力付近で急激に筋活動が上昇する傾向にあり, 全く異なる咬合力との関係を示した.また, 噛みしめを行っていない咬頭嵌合位において, 最大筋活動量の5-32%もの筋活動が上頭にはバックグラウンドとして存したが, 下頭には咬合力と関連した筋活動は全く認められなかった.さらに上頭には, 頤部のタップ機械刺激で伸張反射様の反射性筋電図応答が, 歯のタップ機械刺激では歯根膜咬筋反射と同様な時間経過を示す反射応答が認められた.また, 上頭は関節頭の前方移動が認められず, 下顎が回転運動のみで開閉口している蝶番運動期間で上頭は筋活動量を直線的に変化させた.この事は, 関節円板と関節頭の相対的位置関係の変化と上頭筋活動が密接な関係を保っていることが示唆された.一方下頭筋活動量は関節頭の前方移動距離と極めて高い相関を示して変化した.この様な上頭の機能特性と関節円板の前方転移との関わりについて, 特に上頭で認められた伸張反射様筋電図応答との関連で考察を加えた.

著者関連情報
© 日本顎口腔機能学会
前の記事 次の記事
feedback
Top