社会学研究
Online ISSN : 2436-5688
Print ISSN : 0559-7099
特集 社会運動研究の新基軸を求めて
〝一九六八〟の脱政治化と社会運動論における敵対性の分析をめぐって
――一九六八〜一九六九年東大闘争から考える――
小杉 亮子
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2020 年 104 巻 p. 37-61

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抄録

 本稿の目的は、世界的な社会運動の時代としての〝一九六八〟をめぐる議論のなかで運動の脱政治化が起きていることを指摘し、脱政治化を回避しうる社会運動論の方向性を探究することにある。日本の〝一九六八〟にかんする議論では、新しい社会運動論が硬直的な社会運動史観として定着したことによる運動の政治的次元の縮減と、マクロな社会構造から個別の社会運動を論じるという、新しい社会運動論の性格に由来する運動の脱政治化が生じていた。そこで本稿では、〝一九六八〟の社会運動を脱政治化させずに、社会運動が敵手とのあいだにつくりだす敵対性と、そうした敵対性を創出する運動参加者の主体性を十分に描き出すひとつの方法論として、生活史聞き取りを提示する。具体的には、生活史聞き取りにもとづく〝一九六八〟分析の一例として、一九六八〜一九六九年東大闘争の分析を示す。東大闘争では、一九六〇年代の社会運動セクターの変動を受け、望ましい学生運動のありかたをめぐって、政治的志向性を異にする学生のあいだで敵対性がつくりだされた。学生たちは社会主義運動の可能性と限界をめぐって厳しく対立し、その対立は予示的政治と戦略的政治という運動原理が対立する形をとった。

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© 2020 東北社会学研究会
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