2020 年 104 巻 p. 91-117
社会運動は何かを「変える」存在であった。だが社会学における社会運動論は、「なぜ運動は起きたのか」に比べ、「何を変えるのか」については十分な関心を寄せてこなかった。構造への接続を念頭に置きながら、社会運動の「効果」という論点を深めようとする場合、次の三つのアプローチの可能性がある。第一に、社会的争点の構造的布置とその変容を映し出すものとしての社会運動、第二に、マクロ-メゾ-ミクロを接合させるエージェントとしての社会運動、第三に、時間を超える構造化された効果としての社会運動である。本論が確認したことは、社会運動は、個人や親密圏のような「ローカルな局域」の水準にまず基礎づけられることで、むしろ、時間的幅をもつ構造的効果を有することができるという点であった。社会運動は、再帰的なローカルナレッジの担い手として、主体と構造の間を連接していく。