抄録
コロナ禍は、日本の社会学者にとって「初めて直面する現実」であるため、いわゆる「先行研究」に乏しい。現在われわれが直面しているコロナ禍をどう社会学的に研究できるのかを考えたい。そのため、まずはじめに、災害社会学の観点から、災害とコロナ禍の共通点と相違点を明らかにする。次に、人類・社会とパンデミックについて、簡単に歴史的に振り返り、現代社会のもつ構造的特徴とパンデミックとの関連性を明らかにする。
以上の議論を基に、社会学がコロナ禍にどう取組むべきかを、前衛の研究と後衛の研究(社会実験としてのコロナ禍)の二つのアプローチに分けて検討する。最後に、現在のコロナ禍は日本の社会学にとって、コロナ禍での社会学的な研究を構想する能力が、日本の社会学にあるのかどうかが試されている、という問題を投げかけたい。