社会学研究
Online ISSN : 2436-5688
Print ISSN : 0559-7099
論説
新規農業参入者と村落の関係変化
山形県庄内地方の一事例から
三須田 善暢
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2015 年 97 巻 p. 105-131

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抄録

 新規農業参入者の定着過程において障壁とみなされてきた村落は、村落内集団への溶け込み如何によって資源ともなりうるとの指摘がされてきた。しかし、新規参入者が村落に入り込むにつれ、これまで後見人的な存在であった重要人物(村落運営の中心的担い手)らとの関係性に多くの変化が生じ、彼らから「問題」視されるようにもなっている。本稿はその過程を詳細に追うなかから、その「問題」があらわれてきた理由を考え、そこに示唆される現代村落の特性を把握しようとした。

 その結果次のことが明らかになった。参入者の経営規模が拡大し相当程度の信頼を獲得すると、ほかの住民と同等に見られるようになる。この段階で村落「規範」への同調がより強く期待されるようになるが、しかし、参入者は以前の役割期待を持って行動していたため、これまであれば問われなかった行動も「問題」視されるように変化していたのである。この村落「規範」とは、一戸前としての村入りを選択した成員に対して要求される、村人相互のつきあい方および村内諸役割の引き受け方・こなし方に関わる当為則とまとめられよう。

 また、このように生活面での重要性が多く関わっていることに、現在の村落の特性の一端があらわれていると思われる。

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© 2015 東北社会学研究会
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