社会学研究
Online ISSN : 2436-5688
Print ISSN : 0559-7099
小特集 多文化社会の現在――宮城県における外国人住民と地域社会――
インドネシア人介護福祉士候補者が日本で働く理由
宮城県における社会福祉法人Xの事例
菅原 真枝ニ・ヌンガー スアルティニ
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2015 年 97 巻 p. 75-103

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抄録

 経済連携協定にもとづく外国人看護師・介護福祉士候補者の受け入れが開始され、我が国においてはこれまでに七五四名のインドネシア人介護福祉士候補者を受け入れている。本研究は、そのなかから宮城県の社会福祉法人Xで働く六名の候補者に対する聞き取り調査を実施した。先行研究は「キャリア形成」や「家族に対する経済的支援」という要因に着目しながら候補者の来日動機の分析をおこない、とりわけ「経済的動機」が定住化傾向を強めると指摘している。だが本研究の立場からすれば、候補者たちが日本で働く理由は、たんなるキャリア形成や家族に対する経済的支援という概念では説明できない。日本で働いた経験を帰国後の就業のキャリアアップに直接的に結びつけようとしている候補者はみられず、また、経済的支援といってもそれは母国に残された家族が生活困窮から脱するためのものではないことが明らかになった。候補者たちが来日するにあたってはいくつかの条件が重なっており、母国にはない介護という仕事に携わることでその介護技術をあらためて母国での家族介護に生かそうとする意識を高めている。また、日本語能力を獲得できたことが積極的に評価されている点にも注目する必要がある。こうしたキャリア形成や経済的理由にはおさまりきらない多様な側面にもとづいて候補者たちが日本で働く理由を検討していく作業が求められる。

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© 2015 東北社会学研究会
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