社会学研究
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論説
雑誌『家の光』にみる嫁の意識変化
高度経済成長期における兼業化の進展を背景として
小林 博志
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2017 年 99 巻 p. 157-180

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抄録

 本稿では、高度経済成長期における農家の嫁の意識変化を、JAの家庭総合誌『家の光』から考察する。高度経済成長期には、営農の機械化・施設化による営農経費の増大と都市化による生活費の増大が、農村の消費社会化を進行させ、これにより兼業化が加速する。夫の兼業により、営農の中心的役割を嫁が担うことで営農での地位改善がなされ、農協婦人部と結びついた生活改善運動の展開を背景に、営農での地位改善は家庭生活での地位改善へと連動する。結果として、消費と教育への関心を高める。これは、嫁の意識が近代家族的価値観へと変化した表れである。テレビ普及というメディア環境の変化が、この意識変化を加速させ、テレビが示す「人並み」のモデルを追い求めることで、農村の平準化が進行する。そして、この変化を促す要因の一つが、農村に存在した旧来の気質である。農村の社会的弱者であった嫁の地位改善とそれに伴う意識変化は、近代化の浸透が農村の家庭レベルにまで及ぶことを意味し、このことが本稿を通して明らかとなる。

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© 2017 東北社会学研究会
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