抄録
嗅感覚の一つの特徴である順応現象を,現在までの精神物理学的および生理学的知見に基づいてモデル化した.本モデルは,嗅応答がにおい分子とレセプタ分子の結合速度に比例するとの仮定から誘導されたものである.そこで,本研究で誘導した順応モデルに含まれるパラメータを変化させたときの,嗅応答の時間的推移をシミュレートした結果,実際の順応現象をうまく説明できることが明らかとなった.さらに,香りの活用による快適空間設計において,順応を考慮した香りのコントロール法について若干の考察を行った.その結果,香りは濃度を緩やかに上昇させながら間欠的に流すことが有効であると予想された.