1996 年 21 巻 61 号 p. 123-130
本研究は太陽熱を熱源とする床暖房システムの実用化研究の一環として行われているもので,本システムでは床面に融解潜熱を用いるいわゆる,蓄熱パネルを敷き詰めることで同所に蓄熱機能も持たせている.そのため,本システムでは,ある限られた時間内に意図する蓄熱材の相変化,特に融解に必要な時間をあらかじめ知ることが良好な系を構築するうえで必要で,ここではこの点に重点を置いて研究されている.具体的には板状の容器内に入れられている同蓄熱材を表裏両面から加熱もしくは冷却した際の蓄熱材の相変化の進行と時間との関係を近似解法を用いて理論的に考察するとともに,相応の実験も試みてその妥当性を検討している.その結果,同解法は少なくとも,熱を蓄える過程に対しては実用上,何ら問題がないことを見いだした反面,蓄えられた熱を放出させる,いわゆる,放熱過程に対しては蓄熱材に過冷却現象が生じることで,その確認は今後に残している.