抄録
本研究は自然通風併用型放射冷房システムの有効性の検討及び設計資料の作成を目的としている。本研究で提案している自然通風併用型放射冷房システムは、外気環境が良好な時期にのみ外気を導入する既存のハイブリッドシステムと異なり、真夏にも若干の通風により室内の環境調整を行う。このため、本システムは室内において天井付近が暖かく、床付近が冷たくなるような上下の温度成層を作る。この上下の温度成層の生成を利用する。すなわち通風もしくは自然換気の為の開口は室の上部天井付近に設け、居住域は冷気溜りとなるようにして放射パネル等により冷房するものである。この方式により生じる上下温度成層は、特に夏季の外気温が上昇したとき、室内環境の維持のため重要なことである。外気温の条件が悪くなるほど、この温度成層は顕著となり、室内環境を屋外環境から隔離するように働くことが可能である。既報(その1)では、自然通風併用型放射冷房システムの概念を説明し、中間期において自然通風併用型放射冷房システムが従来の冷房システム及び自然通風と床吹出し冷房を併用したハイブリット空調より省エネルギー的であることを報告した。本論文(その2)は自然通風併用型放射冷房システムが外気が高温多湿となる気候に適用可能か否かを検討するとともに、本システムに関わる設計変数の変化が室内温熱・空気環境に及ぼす影響などをCFD解析により検討する。