空気調和・衛生工学会 論文集
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可動羽根吸音体を用いた直管型消音器の気流および音響特性
宮内 香織板本 守正
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2006 年 31 巻 115 号 p. 25-32

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抄録
空調ダクト系には流量制御のためにダンパがしばしば設置されるが,気流による発生騒音を生じさせる原因となりうる。さらに,空調対象室ではその用途に応じた室内許容騒音レベルが定められており,空調ダクト系を伝播する音を小さくするための消音設計が行われる。空調ダクト系に設置された消音器はその内部に吸音の機構を有し圧力損失が生じることから,吸音と圧力とのバランスが重要となる。そこで,吸音効果をもたせた羽根型のダンパである流量制御装置を直管型消音器の内部に挿入することとした。ダンパは流量制御機能が平行翼タイプより優れている対向翼タイプとしている。消音器を単体で空調ダクト系に設置しても所定の減音量が得られない場合,連続した複数の消音器が空調ダクト系に設置されるが,この場合の消音器の性能は単体の消音器の整数倍の性能と異なる。よって,空調ダクト系に単体で設置した場合と連続して設置した場合とを比較しておく必要がある。さらに,消音器の性能測定方法はISO7235に規定されているが,損失圧力を測定するにはその方法を再考する必要があることが既知であるため,本論文ではISO7235に基づき置換ダクトを用いた予測値と置換ダクトを用いない方法による測定値とを比較する。ISO7235において挿入損失および気流による発生騒音の測定は1/3オクターブバンドが規定されているが,既存の空調ダクト系の音響設計資料は1/1オクターブバンドで与えられていることから本論文では1/1オクターブバンドにより測定した。その結果,以下の知見を得た。1)可動羽根吸音体を用いた直管型消音器の気流および音響特性は,供試体の連結数および可動羽根吸音体角度に依存する。2)形状抵抗係数は,可動羽根吸音体の角度により予測することができる。3)挿入損失は,いずれの供試体においても1k〜2kHz帯域にピークを有する山型の傾向を示す。4)気流による発生騒音は供試体により,流速の4〜6乗に比例する。5)連続で設置した供試体の挿入損失の測定値は,単体で設置した供試体の測定値を加算した計算値に比べ,63〜1kHz帯域において小さい。このため,空調ダクト系の設計データとしては,危険側となる。6)ISO7235に基づく置換法による損失圧力の予測値は,可動羽根吸音体の角度が小さいほど,測定値と比較して小さい値を示す。
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© 2006 公益社団法人 空気調和・衛生工学会
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