2012 年 37 巻 189 号 p. 29-38
CFDを用いて建築室内の温熱環境解析を行う際には,壁面からの対流熱伝達量を高精度で予測できることが重要である。ところが,一般的な建築室内では壁面近傍の流れは自然対流が支配的であることが多く,広く用いられているレイノルズ平均乱流モデル(RANS)では必ずしも十分な精度が得られないことが報告されている。そこで本研究では,空間フィルタリング乱流モデル(LES)の中でも,より複雑乱流場の予測精度に優れたDynamic LESモデルに着目し,Tianらの自然対流流れ場における実測結果を用いてその精度検証を行った。また,建築分野における実用計算への応用を考え,格子解像度が低下した際の計算結果への影響についても検討を行った。その結果,Dynamic LESモデルが対流熱伝達量の予測に高い精度をもつことを明らかにした。また,格子解像度が低下した際にも,Dynamic LESモデルが他のモデルに比べて実測結果との差異が小さいことを明らかにした。