2020 年 45 巻 279 号 p. 1-9
冷却塔を併用したハイブリッド地中熱ヒートポンプシステムの運用方法として、実測データをもとに地盤の見かけ上有効熱伝導率、地中熱ヒートポンプシステムの負荷、ヒートポンプCOP の3 つの計算条件を修正した上で、シミュレーションにより長期的な熱源水温度を予測して、最適な制御パラメータ(冷却塔運転の設定温度)を決定する方法を提案した。そして、実建物に導入されたシステムを対象に本方法を適用した。結果より実建物に導入されたシステムでは地盤の見かけ上有効熱伝導率の推定値が 4.5 W/(m・K)と大きくなったこと、最大冷房負荷が小さかったことなどから、冷却塔の運転を行わない運転が最適運転であるという結論が得られた。8 年間の計測結果から、地中熱交換器採放熱量について、放熱量の各年度の平均値は採熱量の各年度の平均値の約 5 倍であるにも関わらず、シミュレーションの予測と同様に、ヒートポンプ一次側入口温度の長期的な上昇は1~2℃の範囲に収まり30℃を下回ったことを確認した。以上より、本運用手法の有効性が確認できた。