2020 年 45 巻 279 号 p. 11-18
地中熱利用システムの設計段階において地下水流れによる熱輸送を考慮することで、地下水流れが存在する場では導入地中熱交換器規模が削減可能である。本研究は、地下水流れを伴う地中熱交換器周囲のこれまで理論解析解の得られていない温度応答関数を対象とする。無限円柱周りのポテンシャル流れ場における移流拡散問題 -移動無限円筒問題- について、有限体積法による数値解析を用いたパラメータスタディを行う。この数値解析結果を人工ニューラルネットワークに学習させ、移動無限円筒問題の温度応答関数を再現する回帰モデルを構築した。移動無限円筒問題の温度応答関数を回帰した人工ニューラルネットワークは、無次元温度にして、数値解析値に対するRMSE が9.67 × 10<sup>-4</sup>であり、最大絶対誤差では0.0212、最大相対誤差では7.76%と、回帰モデルとして良好な性能を示した。この人工ニューラルネットワーク回帰モデルによる1 時間刻み20 年間の移動無限円筒問題の温度応答関数の計算時間は54.9 sであり、数値解析手法と比較して大幅な計算時間の削減がなされた。