空気調和・衛生工学会 論文集
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携帯型熱線風速計の特性に関する研究
池田 耕一吉沢 晋細川 輝男
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1983 年 8 巻 21 号 p. 55-63

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抄録
最近,携帯用の熱線風速計が,その取扱いの容易さから,カタ寒暖計に代わって保健所の監視員やビル管理技術者の間で広く用いられるようになってきた.しかしながら,必ずしも誤差の少ない計測がなされているとは言えない場合も多いようである.その原因の一つに,風速計の較正曲線,指向特性などの基本的事項に関する十分な考慮が払われていないことが挙げられる.本報では,市販の携帯用熱線風速計の幾つかを例として,その基本特性を,特別に設計した風胴によって調べるとともに,この種の風速計による測定法についても検討を加えた.その結果,以下に示すような幾つかの結論を得た.1)風速計の出力値と実際の風速は必ずしも一致しないので,誤差の少ない計測を行うためには,較正が是非とも必要である.2)特に,ある一定値(0.2m/s)以下の風速のときは,較正曲線の傾きが緩やかとなるため,正確な測定ができにくくなる.風速計によっては,0.2m/s以下での曲線の傾きが0(全く平担)となり,これ以下の風速の測定ができない場合があった.3)いずれの風速計も,それぞれに特有の指向特性をもっており,プローブの向きによっては極端に低い出力しか示さないことがあるので,気流の向きをあらかじめ調べておき,それに対して,プローブの指定された向きを合わせることが望ましい.4)特に0.4m/s以下の低風速の場合は,熱線がつくり出す対流が,温度測定部に影響を及ぼす場合があり,このため,比較的高風速(0.8m/s程度)のときの指向特性とは異なったものとなる.熱対流の影響を強く受けている状態での測定は,そうでない場合の測定と極端に異なったものとなるので,このような状態(熱線の真上に温度測定部がくるように,プローブを固定すること)での測定は,避けるべきである.また,たとえ対流の影響を受けなくとも,低風速の場合には気流の向きを知りにくいなどの事情があるので,できればこのタイプでの計測はしないほうがよい.
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© 1983 公益社団法人 空気調和・衛生工学会
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