抄録
本研究では、自然情景の高速認知における判断レベルの優位性を検討した。実験参加者は、30 msあるいは70 ms間画面に呈示される自然情景からターゲットを検出して、基本レベル(鳥と判断)あるいは上位レベル(動物と判断)でカテゴリー化することが要求された。ターゲットと非ターゲット(乗り物)が異なるカテゴリーに属するように設定された実験1では、30 msの呈示時間条件において上位レベルよりも基本レベルでカテゴリー化する方が課題成績が高くなった。しかしながら、基本レベルの判断条件における非ターゲットがターゲットと同じ上位レベルの概念を共有するように設定された実験2では、特に30msの呈示時間条件で基本レベルよりも上位レベルでカテゴリー化する方が成績が高くなった。これらの結果に基づいて、自然情景の認知における基本レベルの判断は常に優位ではなく、判断レベルの優位性は当該のカテゴリー化処理が非ターゲットのカテゴリーによって制約を受けるか否かに依存することが示唆された。