人間環境学研究
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人財マネジメントを通じた価値創造
波多野鶴吉に学ぶサステナビリティ経営
竹原 正篤 長谷川 直哉
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 18 巻 1 号 p. 73-78

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抄録
現代社会は多くの課題に直面している。グローバル化やイノベーションの進展は経済成長を加速させたが、同時に、地球温暖化や資源の枯渇、格差の拡大など深刻な環境問題や社会問題を引き起こした。そして現在は、地球規模での感染症の蔓延という新たな問題に直面している。これらの問題に対処するためには、高い社会的・経済的倫理観に裏付けられたサステナビリティ社会の構築が不可欠となっている。このような中、企業は、コーポレートガバナンス、企業の社会的責任(CSR)、共通価値の創造(CSV)の強化に取り組んでいる。現代社会が希求する経済的価値と社会的価値が調和したサステナビリティ社会の実現を目指した取り組みは、明治期のわが国企業の経営者によって推進されていた。本稿では、その代表的な経営者の一人であるグンゼの創業者、波多野鶴吉を取り上げた。波多野は、生涯を通じ地域社会の人々や従業員の物心両面での幸福を実現することに捧げた。私欲を排し利他の精神を企業ミッションに掲げ、製糸製品の品質向上、顧客満足、従業員の生きがい、地域社会との融合、そして収益の獲得と、トレードオフを内包する様々な経営課題を解決し、地方の一中小企業であった郡是製糸が今日のグンゼという大企業に成長する礎を築いた。困難な状況下でも常に人を大切に扱った波多野の理念と行動は現在の企業経営者に多くの示唆を与えている。
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© 2020 人間環境学研究会

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