人間環境学研究
Online ISSN : 1883-7611
Print ISSN : 1348-5253
ISSN-L : 1348-5253
感謝の手紙を書くことが人生満足度に与える影響
保坂 知沙白岩 祐子
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2021 年 19 巻 1 号 p. 35-39

詳細
抄録
感謝の手紙や文章を書くなど、他者への感謝を喚起する介入が主観的幸福感に与える正の効果は、これまで国外の実証研究で確認されてきた。しかし国内では、検討されてきたものの介入の効果はまだ確認されていない。その理由として、感謝に付随して生じる心理的負債感が日本人の場合とくに強く、これが感謝の効果を相殺するためだと考えられてきた。また、感謝を喚起する複数の介入の中でもとくに手紙を書くのが有効だと予想されているが、研究によっては必ずしも予想どおりの結果が得られているわけではない。その一因として、当該研究が複数の介入条件に一律に課している制限時間が短いことが挙げられるだろう。感謝について思考したり、感謝を文章にしたり、感謝の手紙を書いたりする各条件のなかで、手紙を書くことは思考、表現、伝達の全要素を含むもっとも複合的な作業といえる。したがって一律に短い制限時間を課すことは、とくに手紙を書く条件に不利に働く可能性がある。先行研究にもとづき、本研究は感謝3条件(感謝の手紙を書く/文章を書く/思考する)と統制条件(部屋のレイアウトを書く)の主観的幸福感を比較したが、以上の二点をふまえ、①時間制限ではなく文字数制限を課す、②個人特性としての心理的負債感を測定し、その効果を統制する、という変更を加えてオンライン実験を行った。主観的幸福感(人生満足度)を従属変数とする重回帰分析の結果、想定どおり、感謝の手紙を書く条件に有意な正の効果が見いだされた。この結果にもとづき、感謝研究の今後の方向性が議論された。
著者関連情報
© 2021 人間環境学研究会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top