抄録
本研究の目的は暗算(加算、減算、乗算)における記憶検索及び量的操作処理の役割について検討することであった。暗算(加算、減算、乗算)を一次課題、母音判断課題及び方向判断課題を二次課題とする2重課題手続きが用いられた。母音判断課題は記憶検索処理、方向判断課題は量的操作処理をそれぞれ干渉すると考えられる。実験の結果、乗算においては方向判断課題より母音判断課題の方が干渉効果が大きいこと、一方、加算においては母音判断課題より方向判断課題の方が干渉効果が大きいことが明らかになった。減算では母音判断課題と方向判断課題の干渉効果の間に差が見られなかった。これらの結果は、乗算においては記憶検索処理が、加算においては量的操作処理が重要であることを示唆している。また、減算においては記憶検索処理及び量的操作処理の両方がなされている可能性がある。