人間環境学研究
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論文
環境色彩の心理学的研究(1)
色照明が単純作業成績に及ぼす効果
高橋 晋也
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2005 年 3 巻 1 号 p. 1_41-1_46

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抄録

人間の心理および行動に及ぼす環境色彩の効果を検討した。赤、緑、青、黄の4種類の色照明下で、のべ160名の被験者にクレペリン型の連続加算課題を行わせ、課題成績の他、被験者自身への影響(身体的疲労感、精神的疲労感、眠気、集中力)、経過時間推定、色照明に対する印象(SD尺度評定)等を分析した。実験の結果、色照明はそれぞれ特徴的な印象(赤-“快活”、青-“鮮麗”、緑・黄-“平穏”)を喚起したが、課題成績に関しては、作業の生産性・安定性・正確性のいずれの指標においても色の効果はなかった。時間推定については、すべての条件で過小評価となったが、やはり色条件による差はなかった。被験者への影響に関しては、緑条件において他の条件よりも精神的疲労感が低くなる傾向が示された。また、色条件をつぶした上で、各色照明に対する「好きな」項目の評定値と課題成績との相関を見たところ、照明色を「好き」と評定した被験者ほど作業の生産性と正確性が高くなる傾向が示された。これらの実験結果に基づき、古くから関心が持たれてきた色彩の心理的効用について、その科学的検証における理論的な問題点と、安易な現場応用に対する批判などが議論された。

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© 2005 人間環境学研究会

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