抄録
組織的に対するコミットメント(組織的コミットメント:organizational commitment)と組織内における相互信頼(組織的信頼:organizational trust)は、当該組織のパフォーマンスを決定づける重要な要因である。本研究では、組織的コミットメントと組織的信頼は、共に、組織内の強制的なコミットメントの存在によって醸成されるであろうとの仮説を設けた。本仮説の検証のために、日本の複数の大学内の「研究室」に所属する158名の学生を対象に、強制的コミットメント、組織的コミットメント、組織的信頼のそれぞれを測定する調査を実施した。得られた調査データを分析した所、組織的コミットメントについては、行動的組織的コミットメントと態度的組織的コミットメントの二要因が抽出された。また、強制的コミットメントについては、各組織の責任者である教授・助教授による強制的コミットメント(個人的強制的コミットメント)の程度と、当該組織の活動水準そのものに伴う組織的強制的コミットメントの2つを測定した。以上のデータを用いて分析した所、本研究の仮説を支持する結果が得られた。すなわち、各組織の責任者である教授・助教授による強制的な組織的コミットメントない研究室よりもある研究室の構成メンバーの方が、態度的な組織的コミットメントと行動的な組織的コミットメントが高くなる事が示された。また、強制性がない組織よりもある組織の方が、研究室に属する年数が長くなるほど組織的信頼が向上していくことが示された。