抄録
日本人中高年者の知覚情報処理 、言語記憶、言語流暢性の性差について発達心理学的な検討を加えた。住民検診に参加した40歳から89歳までの男女512名が対象者であった。知覚情報処理、言語記憶、言語流暢性のすべての指標において年齢と性との間の交互作用は有意であった。数字末梢検査における知覚情報処理、言語記憶、言語流暢性では40歳代では性差が認められたが50歳代以降では性差は見られなかった。記憶検査では同様に40歳代での性差は50歳代以降では消失した。言語流暢性検査では60歳代でのみ性差が見られた。若年者では高次認知機能に性差の存在が指摘されてきたが、本研究の結果からはそれらの性差は発達的に定常ではないことを示してしている。これらの結果は性ホルモンが前頭葉機能を主とする認知機能に寄与していることを示唆する。