抄録
本研究は、3~6歳児が現実の出来事を目撃した際に、変装した登場人物の顔や、出来事の中では中心的な役割をもたない人物(周辺人物)の存在や顔について、どの程度正確に再認できるかを検討した。実験参加者の幼児は、女性の話し手(ターゲット)が紙芝居を読み、男性のお手伝い(周辺人物)が読み終わった紙芝居を持つ等の補助をしているという出来事を、変装条件もしくは統制条件のどちらかで目撃した。変装条件では、ターゲットは紙芝居をする際に、再認テストにおける写真とは異なる髪型で眼鏡を着用していたが、統制条件では、再認テスト時の写真と同様に眼鏡は着用せず髪型も同じであった。出来事を目撃してからおよそ24時間後に、ターゲットの顔再認課題と、周辺人物の存在についての再認課題と顔再認課題を行った。その結果、周辺人物の存在を尋ねる質問に対して、“いなかった”もしくは“わからない”と答える幼児がみられた。また、変装条件のターゲットに対する顔再認率は著しく低く、変装条件のみにおいて、ターゲットよりも周辺人物の顔再認が正確であった。これらの結果が、幼児の顔認識能力や注意能力、インタビュー時の質問方法等の観点から考察された。