史学雑誌
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論文
高級農業生産合作社の成立と瓦解
――河北省を中心に――
河野 正
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2015 年 124 巻 4 号 p. 1-37

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抄録

 本稿はこれまで十分に注目されてこなかった高級農業生産合作社時期の諸問題について整理を行い、それを村落社会の中で考察するものである。中国共産党は土地改革の後、互助組から初級農業生産合作社、高級農業生産合作社、人民公社と進む農業集団化を執行して行った。その中で、土地改革や初級合作社、人民公社に比して高級合作社時期の分析は十分ではなく、その過程で発生する諸問題も十分な検討されてこなかった。
 また高級社化が極めて急速に行われたことから、これまでの研究では基層社会が既に伝統的村落自治が破壊され、上級に抵抗する力を失っていたことが指摘されていた。村落に団結して抵抗する力があるのか否かというのは、基層社会の在り方を考える上で重要な問題である。本稿では檔案史料を中心的に利用し、河北省を対象としてこの点について考察を行った。
 本稿の主な結論は以下の通りである。高級合作社時期には多くの問題が発生しており、高級合作社化、そして人民公社への移行は決してスムーズではなかった。また基層社会の側ではこれらの問題に対し、村として結びつき、他村や上級に対して積極的に対応していた。最終的に合作社の多くは分社を要求するようになり、その結果、分社が促進され、数村一社、一郷一社の規模であった高級社が、一村一社にまで解体されることとなった。農民たちは自らの積極的な抵抗により分社を勝ち取ったのである。このように、1950年代後半の河北省の村落においても中共の影響力は限定的であり、それに対して基層社会の側は団結して対抗していたのであった。

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