抄録
失われた歯周組織を再生させる方法の一つとして,エナメルマトリックスタンパク質の応用が多く報告されている.東京医科歯科大学歯学部附属病院では,エムドゲイン®ゲル(EMD)を用いた「歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法」が2007年10月に先進医療として厚生労働省より認可された.本研究の目的は,先進医療として行われたEMDを用いた歯周組織再生治療の臨床成績を評価することである.本院における実施症例のうち,術後1年経過時に検査が可能であった22名30部位について,プロービングポケットデプス(PPD),臨床的アタッチメントレベル(CAL),エックス線写真上での骨欠損部の測定を行った.術前の平均PPDは6.1±1.4mm,CALは7.1±1.8mmで,エックス線写真上での平均骨欠損深さは5.6±2.7mmであった.術後1年における平均PPDは3.1±0.8mm,CALは4.8±2.1mmであり,術前と比べて統計学的に有意なPPD,CAL値の改善が認められた.アタッチメントゲインは30部位中26部位で認められ,平均獲得量は2.3±2.3mmであった.エックス線写真上での平均骨欠損深さは3.1±1.8mmに減少し,統計学的に有意な改善が認められた.以上の結果から,臨床的ならびにエックス線写真での歯周組織再生が本研究においても国内外の報告と同程度に得られていることが確認された.EMDは現在保険適用されているGTR法に比べ,術式が簡便で,骨欠損が複数に及んでいても適用できる利点があり,患者負担を軽減しつつ歯周治療に対する選択肢を拡げるという点からも,先進医療としてのエムドゲイン®ゲルの適用は効果的であると考えられる.