日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
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ISSN-L : 0387-2343
原著
人間ドック受診者に対する歯周病スクリーニング方法の検討
―単一施設横断研究―
水谷 幸嗣三上 理沙子佐々木 好幸髙谷 典秀太田 秀二郎松浦 孝典城戸 大輔武田 浩平向山 雄人須田 智也和泉 雄一岩田 隆紀
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2020 年 63 巻 3 号 p. 245-253

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抄録

 緒言 : 近年, 歯周病とさまざまな全身疾患に関連があることが明らかになりつつある. 本研究では全身の医学情報を入手可能な人間ドック受診者を被験者として, 口腔内検査データ・唾液サンプル・血清を解析し, 歯周病の重症度への影響を調査するとともに, 歯周病のスクリーニング方法についても検討することを目的とした.

 方法 : 本研究は2015年7~8月に行った単一施設横断研究であり, 人間ドック受診者に歯周病に関する検査を行い, 全身状態のデータと解析することで歯周病と全身疾患の関連について調査した. 歯周病については, 歯周病専門医による歯周組織検査として歯周ポケット検査 (6点法) ・DMFT指数・simplified debris index (DI-S) を行い, 当時の米国歯周病学会の歯周病重症度診断に従って, 歯周病の進行度を健康・軽度歯周炎・中等度歯周炎・重度歯周炎へ分類した. 唾液を用いた歯周病原細菌検査はリアルタイムPCR法を用いて行った.

 成績 : 研究への参加に同意した人間ドック受診者67名 (平均53.3±1.6歳, 男性65.7%) を被験者とした. そのうち, 4名は糖尿病, 3名は心血管疾患, 1名は慢性腎臓病に罹患しており, Body Mass Index (BMI) は平均23.36±0.48であった. 非喫煙者が39名, 過去喫煙者が19名, 現在喫煙者が9名であった. また, 歯周病は健常18名, 軽度26名, 中等度15名, 重度8名であった. 多重ロジスティック回帰分析を用いて分析を行ったところ, 唾液中のPorphyromonas gingivalis菌数, 年齢, 中性脂肪, 超音波式踵骨骨量測定による骨密度を用いて歯周病重症者を識別できることが明らかとなった (感度0.61, 特異度0.95, AUC 0.85).

 結論 : 本研究は被験者数が少なく単一施設での予備的な調査であり, 限定的な所見の可能性があるが, 非侵襲的に採取できる唾液サンプルにおいてP. gingivalisの定量的な細菌検査を行い, 人間ドックでの検査結果と組み合わせることで歯周炎の早期発見ができる可能性が示唆された.

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