日本歯科保存学雑誌
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原著
ニッケルチタン製ロータリーファイルと手用Kファイルの湾曲根管形成能 : 未経験者による根管形成の評価
牧 圭一郎海老原 新中務 太郎木村 俊介興地 隆史
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2020 年 63 巻 4 号 p. 305-311

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抄録

 目的 : ニッケルチタン製ロータリーファイル (NiTiファイル) の使用経験のない術者が, NiTiファイルあるいはステンレススチール製手用Kファイル (Kファイル) を用いて湾曲根管の根管形成を行った際の, 根管追従性, 作業時間および形成中に生じたエラーの頻度を比較することを目的とした.

 材料および方法 : 59名の, NiTiファイルの使用経験のない東京医科歯科大学歯学部歯学科4年生を術者とした. 各学生は, ProTapar SXで根管上部のフレアー形成が施されたJ字型透明根管模型 (作業長17mm, 湾曲角度45°) に対して, ProTaper NEXTによる根管形成 (NiTi群), およびKファイルを用いたステップバック形成 (Kファイル群) を各1本ずつ行った. NiTi群ではKファイル#10から#20を順次用いてでグライドパス形成後, 根管形成用モーター (X-Smart Plus) を用いてX1, X2, X3の順に作業長まで根管形成を行った. またKファイル群では, Kファイル#10から#30を順次用いて作業長まで根管形成後, 1mmごとのステップバック形成を#55まで行った. 根管形成に要した時間はストップウォッチにて計測した. 器具破折やレッジ形成が生じた場合は, それぞれの頻度を記録した. 形成前後の根管模型を, デジタルマイクロスコープを用いて倍率20倍で撮影し, 画像解析ソフトウェア (Photoshop 7.0) で重ね合わせ, 根尖から0, 0.5, 1, 2, 3mmにおけるCentering Ratioを (外湾切削量−内湾切削量) /形成後の根管の直径, として算出した. Centering Ratioおよび作業時間は対応のあるt検定, レッジ形成の頻度についてはMcNemar検定にて有意水準5%で解析した.

 結果 : Centering Ratioは, 0, 0.5, 1, 2mmで, NiTiファイル群がKファイル群と比較して有意に小さい値 (変位が少ないことを示す) であった (p<0.05). NiTiファイル群の作業時間は, Kファイル群と比べ有意に短時間であった (p<0.05). レッジ形成はNiTi群で5根管, Kファイル群で43根管に生じ, 両群間で有意差を認めた (p<0.05). 器具破折は両群とも生じなかった.

 結論 : 本研究の条件では, NiTiファイル使用経験のない術者がProTaper NEXTを用いて根管形成を行った場合, Kファイルを用いた場合と比較して優れた根管追従性, 短い作業時間, および低いレッジ形成の発生頻度を示した.

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