日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
症例報告
Periapical osteoperiostitisを伴う上顎大臼歯歯根囊胞に外科的歯内治療を行った1症例
飯野 由子井澤 常泰八尾 香奈子興地 隆史
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 63 巻 4 号 p. 332-337

詳細
抄録

 緒言 : 上顎洞に近接する根尖性歯周炎により, 上顎洞底にドーム状の薄い硬組織が形成され, エックス線写真で暈状の不透過像として現れることがある. この反応性の骨形成はperiapical osteoperiostitis (PAO) と称される. 本稿では, PAOを伴う上顎第一大臼歯歯根囊胞に外科的歯内治療を施行し, 良好な経過が得られた症例を報告する.

 症例 : 患者は47歳女性. 上顎右側第一大臼歯の根尖病変の存在を指摘され当科を受診した. パノラマエックス線写真および口内法エックス線写真では, 近遠心頰側根根尖周囲のびまん性透過像, および右側上顎洞底を挙上する不透過像が確認された. 歯科用コーンビームCT (CBCT) では, 近遠心頰側根根尖を含む8×8×10mm程度の境界明瞭な透過像を認めるとともに, これに近接する上顎洞底は洞内に挙上されドーム状の不透過像を呈していた. 既根管治療歯, PAOを伴う症候性根尖性歯周炎と診断し, 通法に従い根管治療を行ったが, 近心頰側根管および近心頰側第二根管から排膿が持続したため, 近遠心頰側根に歯科用実体顕微鏡下で歯根尖切除法および逆根管充塡法を施した. 摘出した組織は病理組織学的に歯根囊胞と診断された. 1年後の経過観察時では近遠心頰側根根尖周囲に不透過性の亢進を認め, また上顎洞底の不透過像は近遠心的に縮小していた.

 結論 : PAOを伴う上顎第一大臼歯歯根囊胞に外科的歯内治療を行い, 良好な治癒経過が得られた. CBCTは本症例の診断と治療計画立案に有用であった.

著者関連情報
© 2020 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
前の記事
feedback
Top