歯科医学
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SnF2溶液処理合成ハイドロキシアパタイトの表面性状およびタンパク質吸着に関する研究
太口 裕弘神原 正樹
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1991 年 54 巻 4 号 p. 333-346

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抄録

SnF2処理による歯表面性状の変化が, ペリクルの形成にどのような影響を及ぼすのかを解明する目的でSnF2処理エナメル質の接触角および合成ハイドロキシアパタイト (HAp) の界面動電位 (Zeta電位) の測定から, SnF2処理エナメル質およびHApの表面性状を検索し, このSnF2処理HApへのタンパク質吸着現象を界面電気化学的に解析した.
SnF2処理によりエナメル質の接触角はhydrophobicに, HApのzeta電位は負に変化し, NaF系のフッ化物溶液で処理した場合と逆の表面性状を示した. 3種類のタンパク質 (HSA, CA, PR) 溶液中のSnF2処理HApのZeta電位の解析から, SnF2処理HApへのタンパク質の吸着はLangmuir型の単分子吸着であることが明らかになった. また, 吸着被覆率および吸着自由エネルギーは, 無処理HApに比べ, 吸着被覆率が各タンパク質とも低濃度から急激に高くなる傾向を示し, 吸着自由エネルギーが大きい値を示した.
以上の結果から, SnF2でHApを処理するとHApのhydrophobisityおよび表面電位構造が変化し, 酸性, 中性および塩基性タンパク質の吸着が増加したことから, この吸着現象が静電気学的相互作用および熱力学的相互作用に支配されることが明らかになった.

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© 1991 大阪歯科学会
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