歯科医学
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博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
抽出法による歯冠補綴用材料の細胞毒性評価 (in vitro)
堤 信之
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1991 年 54 巻 4 号 p. g19-g20

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抄録

歯科材料の口腔機能シミュレーション下での細胞毒性試験を目ざす場合, 材料を抽出して行う方法がある. しかし, 実際に試験を遂行するうえで抽出方法, 抽出液, 抽出回数, 細胞種および判定法などに関して未だ不明な点が多い. 本実験ではこれら抽出条件が歯科材料の細胞毒性試験におよぼす影響を明らかにすべく, 歯冠補綴用材料を用いて検討を行った. その結果, 37℃で200rpmの旋回を負荷する動的抽出では, 37℃での静置抽出や121℃, 2気圧の高圧蒸気減菌器中での高温抽出に比較すると, 実験に供した材料, とくにNi-Cr合金に対して細胞毒性が明確に認められた. 抽出液の種類に関しては, 血清添加培養液では他の抽出液に比較して材料, とくにNi-Cr合金の細胞毒性が顕著に認められた. 抽出回数による細胞毒性への影響については, 実験材料中で常温重合レジンにおいて回数を重ねるとともに減少した. L-929細胞では歯肉由来初期継代培養細胞に比べ材料に対する細胞毒性が明確に認められた. 中性赤とMTTを使用した2種の判定法はともに各種材料について同じ傾向の細胞毒性データを示し, 両法間での相違は認められなかった. 以上の結果から, 今回の歯冠補綴用材料の細胞毒性試験には血清添加培養液を用い, 動的抽出で24時間を1単位として5回の抽出を行えば, 評価できることがわかった.

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© 1991 大阪歯科学会
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