歯科医学
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Prevotella intermedia における菌体表層構造と赤血球凝集性について
藤田 康一福島 久典
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1993 年 56 巻 5 号 p. 398-414

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抄録

 形態学的に異なる表層構造をもつ Prevotella intermedia の付着性を知る目的で、赤血球凝集性と熱、酵素および糖の凝集阻止を試験した。
 供試したほとんどの菌株が赤血球凝集性を示した。Homology group や線毛 type と凝集性との間に明瞭な相関性は認められず、線毛構造をもたない菌株においても強い凝集活性がみられた。90℃、10 分間の加熱で凝集性が残存していた 2 株を除くすべての菌株が 70℃、10 分間の加熱で失活した。Trypsin、chymotrypsin および protease に対して感受性を示す菌株と、抵抗性を示す菌株とがみられた。ATCC 33563 group に属する Prevotella intermedia strain E8 では、D-glucosamine を作用させたのちに凝集活性は消失したが、他の菌株では影響を受けなかった。
 Trypsin 処理で失活した type A 線毛をもつ Prevotella intermedia strain O2 の形態変化を観察した結果、処理した細胞の negative 染色像では、グラム陰性菌特有の皺はあまりみられず、外形も円滑さを欠いていたが、処理、未処理像ともに線毛構造に変化は認められなかった。処理した細胞の走査電顕像では表面が滑らかであったり、凹凸の起伏がゆるやかな像が観察された。処理後の超薄切片像では、対照でみられる dense、less dense、dense の表層構造を一部欠く細胞が多く認められた。
 Trypsin 処理した細胞の SDS-PAGE の泳動パターンでは、27 kDa 付近のバンドが消失していた。
 以上の結果から、Prevotella intermedia の hemagglutinin は菌株により異なり、タンパク分解酵素に対する感受性や D-glucosamine による凝集阻止から少なくとも 3 group に分けられ、線毛構造をもたない菌株や Prevotella intermedia strain O2 のように、線毛以外の表層タンパクによるものも存在することが明らかとなった。

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© 1993 大阪歯科学会
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