歯科医学
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博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
中国人漢民族学童期の頭蓋, 顎顔面形態的研究
超 弘
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1996 年 59 巻 2 号 p. g84-g85

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抄録

頭部X線規格写真分析法が歯科矯正学領域に導入されて以来, 頭蓋, 顎顔面の形態的特徴および成長発育に関する研究が数多く行われてきた. しかしながら, 中国人漢民族学童期における正常咬合者の頭蓋, 顎顔面の形態的な研究は少なく, 今回, とくに漢民族学童期における正常咬合者群の成長発育, 形態的特徴を究明する目的で本研究を行った. 研究資料および方法 資料として, 中国, 北京市西城区の小学校4校の学童2,518名について, 診査を行った. その結果から以下の基準に基づいて180名の正常咬合者を選び, これら正常咬合者の側面頭部X線規格写真, 正貌と側貌の顔面写真および口腔模型を採取した. これらを男女に大別し, Hellman's developmental stageに基づいて分類した. 研究方法として, 通法に従い, 採取した側面頭部X線規格写真について Bjork, Chang, Downs, Riedel, Steiner, Tweed および dimensional linear analysisの分析に加え, 坂本による profilogramによる分析を行い, 正常咬合者群男子と女子のそれぞれについて, 側面頭部X線規格写真の分析には35計測点を設定した. また, 48計測項目おのおのの計測平均値および標準偏差を各段階別に求め, 得られたデータは Personal Computer (Macintosh Centris 650. Apple Computer, Inc., USA)を用い, ソフトとして改良した Quick Ceph. Image (Orthodontic Processing Inc., USA)および STATISTCAを使用し, データ処理を行った. 結果および考察 1.中国漢民族学童の顔面頭蓋の成長はおもに前下方に成長していた. 顔面頭蓋の成長に関して, 歯牙年齢別に要約すると, IIIA-IIIB間の成長では, 男子には大きな変化がみられないが, 女子では前下方への成長が認められた. また, IIIB-IIIC間においては男女とも大きな成長変化がみられ, とくに, 女子では二次性徴の peakが男子より早く認められた. 以上のことから, 学童期における顔面頭蓋の成長変化では, 女子は男子に比べて早期に成長発育がみられ, また, 顔面の大きさでは男子が女子より優っていた. 2.中国人漢民族学童の顔面成長の傾向は上顎部では成長変化が少なく, 下顎部の成長変化が著明であった. 3.中国人漢民族学童と日本人学童の比較では, 前頭蓋底長や下顎骨体長は類似していたが, Gonial angle, Mandibular plane angleは中国人のほうが小さかった. 中国人漢民族学童の上下顎歯槽基底部の成長発育は日本人より水平成分が著明で, とくにオトガイ部の発育は顕著であった. 以上のことから, 中国人漢民族の学童期における, 顔面頭蓋の成長発育のうち, 上下顎骨の前方発育は日本人よりも顕著であり, 同一 Mongoloidにおいても環境や食生活などの相違により顔面頭蓋の成長発育にはそれぞれの特徴を認めることができた.

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© 1996 大阪歯科学会
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