歯科医学
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レーザー照射後のエナメル質および象牙質表面の微細構造
金 光旬神原 正樹
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1997 年 60 巻 1 号 p. 45-57

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抄録

エナメル質および象牙質に対するレーザー照射の影響を表面微細構造および表面化学組成の変化から解明する目的で, CO2レーザーおよびNd: YAGレーザーの2種のレーザーを用いて研究を行った. 表面微細構造については原子間力顕微鏡(AFM)および電子顕微鏡(SEM)による観察を行い, 表面化学組成に関してはX線光電子分光分析(ESCA)によって側定を行った.
AFMによる表面微細構造観察の結果, レーザー照射エナメル質においては隣接するエナメル小柱結晶が融合する状態が観察され, 象牙質においては象牙質結晶が長方形に変化する様子が観察された. これらのことから, 耐酸性の向上はエナメル質および象牙質結晶構造が変化し, 表面積が減少することによって生じる可能性が示唆された. エナメル質および象牙質における結晶の変化は, Nd: YAGレーザーにおいて明確であった. また, レーザー照射による表面微細構造の変化は象牙質においてより著明に認められた.
SEM観察においては, レーザー照射によりエナメル質表面が滑沢化する像が観察された. 象牙質においてはCO2レーザー照射により象牙細管の拡大が起こり, 象牙質表面に亀裂が生じた. Nd: YAGレーザー照射においては, 象牙細管の封鎖がみられ, 高エネルギー密度での照射において溶融・焼結様のまったく異なる像を呈した. しかし, レーザー照射によるエナメル質および象牙質の表面微細構造変化はAFM観察と比べ, 明確ではなかった.
表面化学組成分析の結果, レーザーの照射によりカルシウム, 炭素, 酸素には変化が認められなかったが, リンのピークの変化から, 低エネルギー密度照射においてエナメル質表面に新たなリン酸カルシウムが生成されることがわかり, 象牙質においては, 低エネルギー密度CO2レーザー照射により有機質の減少が起こっていることがわかった.

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© 1997 大阪歯科学会
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