下顎歯肉扁平上皮癌に対する放射線外部照射とブレオマイシンまたはペプロマイシン併用による導入療法の効果について臨床的, X線学的および組織学的に検索し, 以下の結果を得た.
1) 5年累積生存率はT別ではT1, T2群で86%, T3, T4群で64%で, 全体では78%であり, 治療法別では導入療法単独群で87%, 導入療法+手術群で75%であった. 2) 本導入療法によるcomplete response (CR)率は42%であった. 3) 臨床的評価と組織学的評価との関係は, CR3例はいずれもgrade (G.)IV, partial response (PR) 21例ではG.II: 16例, G.III: 2例, G.IV: 3例であり, CRの正診率は100%, PRでは76%であった. 4) 導入療法単独群のCR症例の3年局所制御率は70%, 救済処置により85%, 導入療法+手術群のCR症例の3年と最終局所制御率は同じで86%, PR症例の3年と最終局所制御率も同じで74%であった. 5) G.IIAの3年局所制御率は58%であったが, G.IIB, G.III, G.IVでは局所再発はみられなかった. 6) T1, T2のCR率は48%であったが, T3, T4では33%であった. またG.III, G.IVの組織学的評価はT1, T2では42%, T3, T4では23%であった. 7) 骨破壊のないもののCR率は88%, 圧迫型では52%であったが, 浸潤型では15%, 虫食い型では33%と低かった. またG.III, G.IVの組織学的評価は骨破壊のないものと圧迫型で44%, 浸潤型と虫食い型では25%であった. 8) 組織悪性度評点の7点以上ではCR症例はなく, すべてG.IIAであった.
以上のことから本導入療法にてCRに入った症例の予後は良好で, T1, T2で, 骨破壊のないものや圧迫型, さらに組織悪性度評点が6点以下の症例ではCRに入りやすく, 本導入療法により手術が回避できる可能性が示唆された. また骨破壊の著明なものでもG.IVの評価を示す症例があった. しかし, 組織悪性度評点の7点以上の症例の治療法に関して再検討を要することが判明した.
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