歯科医学
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60 巻, 1 号
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  • 小川 文也, 飯田 武
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    凍結化学療法は局所凍結による循環障害を利用して抗癌剤の組織内濃度を高め持続させる方法である. 著者らは局所凍結により生じる循環障害後におけるPeplomycin (PEP), Cisplatin (CDDP)およびNedaplatinの舌, 頬粘膜および皮膚の各組織内濃度と至適投与条件を検索した. これら抗癌剤の組織内濃度を測定するに先立ち至適投与時期を検索するため, ハムスターの頬嚢を用いて凍結条件と循環動態の観察を行い, ついでウサギ皮膚を用いて局所凍結後の局所循環動態と血管透過性の変化を観察した.
    ハムスターの頬嚢をー40°C以下に凍結した融解後, 毛細血管の血流は停止し再開しない. 細動脈および細静脈の血流は再開するが, 凍結120分後までに停止する. 動脈および静脈の血流は不規則ながら持続し, 凍結3時間後でも血流は保たれていた. ウサギ皮膚の凍結直前に静脈内投与した色素(Evans blue)は凍結部ならぴに周囲組織に漏出しア2時間以上残留した. 凍結1時間後までに投与した色素は凍結周囲組織に漏出し48時間後まで残留した. 凍結後3時間および12時間に投与した色素は凍結周囲組織にわずかな漏出を認めた.
    PEPを凍結前に投与すると凍結された組織ならぴにその周囲組織に高い組織内濃度が得られ24〜48時間持続した. しかし, 凍結後に投与すると凍結された組織への薬剤の移行はなく, 周囲組織にわずかな薬剤の移行が認められた. 凍結前に投与したCDDPは凍結および非凍結組織ともに血清に比べ高い組織内濃度が240時間持続した. 凍結組織, 非凍結組織間に濃度差は認められなかった, 凍結前に投与したNedaplatinの凍結組織内濃度は非凍結組織より高く24〜48時間持続した.
    PEP, CDDPおよびNedaplatinの抗癌剤を併用薬とした凍結化学療法にあたっては凍結直前の投与が効果的であると考えられた.
  • 杉立 光史, 森田 章介, 岡野 博郎
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    下顎歯肉扁平上皮癌に対する放射線外部照射とブレオマイシンまたはペプロマイシン併用による導入療法の効果について臨床的, X線学的および組織学的に検索し, 以下の結果を得た.
    1) 5年累積生存率はT別ではT1, T2群で86%, T3, T4群で64%で, 全体では78%であり, 治療法別では導入療法単独群で87%, 導入療法+手術群で75%であった. 2) 本導入療法によるcomplete response (CR)率は42%であった. 3) 臨床的評価と組織学的評価との関係は, CR3例はいずれもgrade (G.)IV, partial response (PR) 21例ではG.II: 16例, G.III: 2例, G.IV: 3例であり, CRの正診率は100%, PRでは76%であった. 4) 導入療法単独群のCR症例の3年局所制御率は70%, 救済処置により85%, 導入療法+手術群のCR症例の3年と最終局所制御率は同じで86%, PR症例の3年と最終局所制御率も同じで74%であった. 5) G.IIAの3年局所制御率は58%であったが, G.IIB, G.III, G.IVでは局所再発はみられなかった. 6) T1, T2のCR率は48%であったが, T3, T4では33%であった. またG.III, G.IVの組織学的評価はT1, T2では42%, T3, T4では23%であった. 7) 骨破壊のないもののCR率は88%, 圧迫型では52%であったが, 浸潤型では15%, 虫食い型では33%と低かった. またG.III, G.IVの組織学的評価は骨破壊のないものと圧迫型で44%, 浸潤型と虫食い型では25%であった. 8) 組織悪性度評点の7点以上ではCR症例はなく, すべてG.IIAであった.
    以上のことから本導入療法にてCRに入った症例の予後は良好で, T1, T2で, 骨破壊のないものや圧迫型, さらに組織悪性度評点が6点以下の症例ではCRに入りやすく, 本導入療法により手術が回避できる可能性が示唆された. また骨破壊の著明なものでもG.IVの評価を示す症例があった. しかし, 組織悪性度評点の7点以上の症例の治療法に関して再検討を要することが判明した.
  • 杉村 忠敬, 稲田 篠治, 松本 後郎, 吉田 洋
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    歯の喪失が頭蓋の力学的変化に及ぼす影響を観察する目的で, 1)歯冠を削去しないで咬合させたとき(対照群), 2)上下顎の全臼歯の歯冠を削去して, 開閉口運動時には上下顎の臼歯が咬合接触しないとき, 3)さらに, 上下顎の前歯の歯冠を削去して, 開閉口運動時には上下顎のすべての歯が接触しないときの3群について, 立位に固定した麻酔下の成熟日本ザルの両側の咬筋中央部を電気刺激して(30Vあるいは40V)側頭骨, 蝶形骨, 頬骨, 頬骨弓(頬骨側頭突起), 上顎骨および下顎骨のひずみを側定して以下の結果を得た.
    頬骨は上下の全臼歯歯冠部を削去して, あるいはさらに上下の全前歯歯冠部を削去して開閉口運動させてもひずみの竃は対照群とほぼ等しいので, 頬骨は咬合力の影響をほとんど受けない. これに対して, 蝶形骨および上顎骨は全臼歯歯冠部を削去するとひずみ量は対照群の半分以下になり, さらに全前歯歯冠部を削去してもひずみ量はあまり変わらなかった. このことは, 蝶形骨および上顎骨は臼歯部から生じる咬合力の影響を強く受けていることを示している. 咬筋の起始および停止に関与している頬骨弓および下顎骨は, 全臼歯歯冠部を削去してもまだ前歯歯冠部が残っているので, かろうじて咬合位が保持できるためひずみの減少はわずかであるが, 全前歯歯冠部を削去すると咬合位が維持できなくなるので, ひずみは著しく減少する.
    主ひずみの伸展ひずみの方向は, 蝶形骨を除くすべての骨は歯を喪失することによって時計の針の進行方向とは逆方向に変わった. これに対して, 蝶形骨では咬合力を喪失しても主ひずみの方向はほとんど変わらなかった. 蝶形骨のひずみの量と主ひずみの方向との特徴から, 咬合力を喪失すると頭蓋を構成する各骨は蝶形骨を中心に回転様の変形をしていることが示唆された.
  • 野之口 節予, 松崎 伸江, 神原 正樹
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 35-44
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    歯科医療の需給関係を明らかにする目的で, 平成5年の大阪府における齲蝕および歯周疾患の有効需要および潜在需要から求める充足率を指標として検討した. 齲蝕の潜在需要は昭和32年から昭和62年までの歯科疾患実態調査をもとに計算した平成5年の推計値を用い, 歯周疾患の潜在需要はCPITNを指標とした大阪府の歯科疾患実態調査結果(平成5年)を用いた. また, 齲蝕および歯周疾患の有効需要は, 大阪府下6歯科診療所のカルテ調査を行って求めた.
    齲蝕の未処置歯および欠損補綴の充足率は96.97%および34.38%であり, 未処置歯に対する歯科処置は充足されていることがわかった. 一方, 歯周疾患の充足率は65.67%であり, そして, CPITN個人コード別充足率は, 個人コード1〜4で23.42%, 個人コード2〜4で52.55%, および個人コード4で60.57%であり, 歯周疾患が重篤になるほど充足率は高かった.
    齲蝕の充足率に影響を及ぼす要因検索を行うために, 充足率(未処置歯, 欠損補綴)を目的変数とし, 人口, 歯科診療所数, 国民医療費のうち歯科診療医療費の占める割合および家計調査における保健医療費を説明変数として, 重回帰分析を行った. 未処置歯の充足率を目的変数とした場合, 歯科診療所数および国民医療費のうち歯科診療医療費の占める割合に有意差が認められた. また, 欠損補綴の場合, 国民医療費のうち歯科診療医療費の占める割合にのみ有意差が認められた. すなわち, 歯科診療所数の増加は, 未処置歯の充足率を上昇さすが, 欠損補綴の充足率に影響を及ぼさないことが明らかになり, 欠損補綴の需要に対し現状の歯科医療が対応できていないことが明らかになった. このことから, 歯科医療需給問題は, 現在の人口10万対比を指標とするのではなく, 歯科診療所数からの検討が有効であることが示唆された.
  • 金 光旬, 神原 正樹
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 45-57
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    エナメル質および象牙質に対するレーザー照射の影響を表面微細構造および表面化学組成の変化から解明する目的で, CO2レーザーおよびNd: YAGレーザーの2種のレーザーを用いて研究を行った. 表面微細構造については原子間力顕微鏡(AFM)および電子顕微鏡(SEM)による観察を行い, 表面化学組成に関してはX線光電子分光分析(ESCA)によって側定を行った.
    AFMによる表面微細構造観察の結果, レーザー照射エナメル質においては隣接するエナメル小柱結晶が融合する状態が観察され, 象牙質においては象牙質結晶が長方形に変化する様子が観察された. これらのことから, 耐酸性の向上はエナメル質および象牙質結晶構造が変化し, 表面積が減少することによって生じる可能性が示唆された. エナメル質および象牙質における結晶の変化は, Nd: YAGレーザーにおいて明確であった. また, レーザー照射による表面微細構造の変化は象牙質においてより著明に認められた.
    SEM観察においては, レーザー照射によりエナメル質表面が滑沢化する像が観察された. 象牙質においてはCO2レーザー照射により象牙細管の拡大が起こり, 象牙質表面に亀裂が生じた. Nd: YAGレーザー照射においては, 象牙細管の封鎖がみられ, 高エネルギー密度での照射において溶融・焼結様のまったく異なる像を呈した. しかし, レーザー照射によるエナメル質および象牙質の表面微細構造変化はAFM観察と比べ, 明確ではなかった.
    表面化学組成分析の結果, レーザーの照射によりカルシウム, 炭素, 酸素には変化が認められなかったが, リンのピークの変化から, 低エネルギー密度照射においてエナメル質表面に新たなリン酸カルシウムが生成されることがわかり, 象牙質においては, 低エネルギー密度CO2レーザー照射により有機質の減少が起こっていることがわかった.
  • 西藤 佳彦, 板垣 恵輔
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 58-69
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    近年の画像診断機器の発展とは裏腹に, 画像所見はまだまだ言葉による表現のままである. とくに大きさ, 位置といった診査項目は, 個体差や撮影誤差を排除できず詳細な比較分析の障害となっている. そこで, 顎口腔領域において, 大きさ, 位置, 侵襲範囲といった言葉による表現の基となる画像形態学的指標を数値化し, 顎骨画像の任意の位置を数値によって現わし, 詳細な比較分析をこころざした.
    まず, すべての疾患を表示する画像として共通性, 撮影頻度からパノラマ画像を選択した. そこで, パノラマ画像に写る解剖学的構造物の相対的位置関係を調べ, その平均値を基に標準画像の基準となる値を設定した.
    パノラマ画像は, 個体差, 撮影誤差によって構成される画像が変化するため, これを適正または理想条件下での画像へ補正が必要である. そこで, 本学放射線科に所蔵するパノラマ撮影装置3機種の固有断層軌道中心の図面から実寸模型を作製し, これを使って実際に撮影したパノラマ画像から補正用テンプレートを作製して, 画像変形の傾向を調べ補正法を検討した. これらの検討と画像形態学的指標の基準値から,「標準となるパノラマ画像」を作製した. 臨床での画像を「このパノラマ画像」に置換し, この標準画像上を計側することで, 病巣範囲, 位置などを数値として「表示可能」になると考える. この標準画像上を計測した値は, 置換前の値とは異なり, 症例ごとにも異なる。そのため比較検討する際, 混同することが予側される。そこで標準画像上を計測した値に対する単位は, 混同を避けるため, mm単位の後部に研究者(nishifuji itagaki kamada and koseki)の頭文字[NIK]の文字をつけ, mm2NIK, mmNIKと表わす.
    今回の数値化で, 個体差にとらわれない, 病巣の侵襲範囲を表現でき,「病変」と「歯列, 発現領域」の関係および, 病変の「サイズ変化」,「拡大方向の推移」の分析を考えている.
大阪歯科学会例会抄録
  • 船岡 勝博, 尾上 孝利, 佐川 寛典
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 70-71
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    閉鎖性膿腫や歯周炎から分離した嫌気性グラム陰性桿菌のある株はβ-lactam薬に耐性を示し, これら疾患の治療を困難にしている. β-Lactam薬耐性株はβ-lactamaseを産生し, 投与β-lactam薬を分解することによって耐性を示すと考えられている. β-Lactam薬に対する Prevotella intermedia(Pi)の感受性は菌株によって異なるが, 一般にpenicillinsと第一世代cephemsの最小発育阻止濃度(MIC)が高く, 第二・三世代cephemsのそれは低かった. この理由を解析するにはPiの基質特異性を検討しなけれげならない. 本研究ではβ-lactamase産生性を異にするPiを用いて基質特異性とMICの関係を検討した.
  • 中村 真一, 福島 久典, 佐川 寛典
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 71-72
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    Prevotella intermediaは口腔常在菌叢のみならず, 根尖性の感染症, 成人性歯周炎, 急性壊死性潰瘍性歯肉炎, 思春期性および妊娠性歯肉炎から高比率で分離される細菌種である. 本菌の病原性状としては, 宿主細胞への付着性, 粘性物質による組織侵襲性, DNase, hyaluronidase, chondroitin sulfataseおよびcollagenaseの拡散因子, lecitinaseによる細胞破壊などが考えられている. また, 多くの臨床から分離したP. intermediaは赤血球凝集性と溶血性をもち, 溶血によって遊出してくるhemoglobinを使って自らの増殖に利用していることが明らかにされている. 本実験では, 赤血球凝集因子, 溶血因子およびlecitinase様活性因子の相関性を明らかにするためにそれぞれの因子を分離し, 性状を検索した. 実験材料および方法 供試菌株: 講座で保存しているP. intermedia strain E18を供試した. 活性因子の分離: 大量培養して得た菌体を機械的に剪断し, 50%飽和硫安で濃縮後, 35,000rpm, 2時間の遠心で得られた上清をSepharose CL4Bカラムに供した. 赤血球凝集活性の側定: Leungらの方法に従った. 溶血活性の側定: Palmerらの方法に従った. Lecitinaseの活性の側定: Geoffroyらの方法に従った.
  • 仲屋 峰泰, 辰巳 浩隆, 黒田 洋生
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 72-73
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    メチシリン耐性ブドウ球菌(MRS)は, コアグラーゼ産生性からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)とメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCNS)に分類される. 一般に, 従来からMRSAのほうがコアグラーゼ産生によりフィブリン凝固物を形成させ, 組織侵襲性の点で, MRCNSよりも病原性が高いと考えられている. しかし, 近年, MRCNS感染症が増加してきたことやコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の S. epidermidis が, S. aureusよりも先行して多剤耐性化することから, MRCNSはMRSAと同様, 病原性が高いと考えられる. 本研究では, MRCNSを遺伝学的に検索するために, 臨床から分離されたMRCNSのDNA-DNA hybridizationによる同定, plasmid DNAとchromosomal DNA の分析および mecA 遺伝子の検出を試みた.
  • 米田 護
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 73-74
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    再発性アフタ(RA)は, 口腔粘膜に頻発する疾患であるが, 病因および病態には不明な点が多い. 本講座の辰巳は, RAが頻発するアフタ群の唾液について細菌の分離と同定を行い, グラム陽性カクラーゼ陽性球菌(G(+)C(+)cocci)が高率であることを示し, 口腔常在菌叢の構成分布が, RAの病因に関与している可能性を報告している. また, これらアフタ群に対して演者らは, 一定期間乳酸菌飲料を飲用させ, 質問調査によりRAの消失あるいは症状軽減がみられることを報告している. そこで, 本研究では, 乳酸菌飲料の効果を検索するために, 唾液中の総菌数, G(+)C(+)cocciの比率, 唾液常在菌叢を決定する因子として重要な免疫物質である分泌型IgA (SIgA)および潰瘍治癒因子である上皮増殖因子(EGF)を側定し, アフタ群と非アフタ群およびアフタ群の乳酸菌飲料飲用前後の各値の変化について検討した.
  • 倉阪 雅巳, 田村 功
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 74-75
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    癌細胞におけるサイトケラチン(CK)発現様式の検索は, 癌の悪性度の判定や癌患者に対する治療方針の策定に有用な指針を与えるものと考えられている. しかし, ヒト歯肉や頭頸部原発癌のCK発現についての従前からの報告は, 2〜3のCK分子種に限定した免疫組織化学的検索がほとんどであり, 生化学的に検索した報告はきわめて少ない. 本研究では, 臨床的健全歯肉, ヒト歯肉高分化型扁平上皮癌ヌードマウス移植系(GK-1)および上咽頭低分化型癌ヌードマウス移植系(KB-N)で発現されるCKを免疫組織化学的および生化学的に検索し, ヒト頭頸部原発癌の悪性度とCK発現様式との関連性について検討を加えた.
  • 大杉 泰敏
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 75-76
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    発癌の過程には複数の癌遺伝子や癌抑制遺伝子が関与し, これらの遺伝子変化の蓄積によって癌が発生することが明らかにされている. そのなかでp53遺伝子は, その産物がDNA型腫瘍ウイルスSV40のT抗原と特異的に結合する53kDaのタンパク質として同定された. 野生型p53遺伝子は, 細胞のトランスフォーメーションを抑制する機能をもつ癌抑制遺伝子であるが, 変異型p53遺伝子は, 活性化rasとの協同作用により細胞をトランスフォームさせる能力をもち, 細胞の癌化に深く関与している. このような異常は, 口腔扁平上皮癌をはじめとする多くの癌で報告されている. またp53遺伝子の異常やタンパクの過剰発現は, 癌組織で報告されているだけでなく, 異型上皮や過形成上皮でも報告され, 前癌状態ですでにp53の異常が生じていることが示唆されている. そこで本研究では, 発癌過程のどの時期でp53の異常が生じているかを明らかにする目的で, 4-nitroquinoline 1-oxide (4NQO)による舌癌発生モデルを用いて, in vivoにおけるp53陽性細胞の推移を, 免疫組織化学的および免疫沈降法により検討した.
  • 杉立 光史, 森田 章介, 岡野 博郎
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 76-77
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    下顎歯肉扁平上皮癌に対する治療は手術療法が主体となっている. 一方, 術前療法の一つとして行われている放射線外部照射とブレオマイシン(BLM)またはペプロマイシン(PEP)の併用により, 腫瘍の著明な縮小効果を得ることができ, この導入療法のみで腫瘍が消失し, 手術を行わなくても再発することのない症例が存在するようになった. そこで下顎歯肉扁平上皮癌に対する導入療法の効果について検索するとともに, 本療法の有用性について研究した.
  • 野之口 節予, 松崎 伸江, 神原 正樹
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 77-78
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    高齢化社会を迎え国民医療費の増加が顕著になるにつれ, 歯科医療における需給問題が注目を集めてきている. 今回, 平成5年の歯科疾患実態調査報告および開業歯科医師カルテ調査をもとに算出した充足率から需給問題をとらえる目的で本研究を行った. また, 昭和62年との比較検討および歯科疾患充足率の増加に関与する要因について分析した.
  • 上村 学
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 78-79
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    生活歯髄切断後の歯髄の創傷治癒については多くの報告がなされてきた. また, 生活断髄に水酸化カルシウムが用いられるのは, それ自体強アルカリ性であるために, これと接する歯髄表面を凝固壊死させ, この刺激が歯髄組織に象牙質形成と修復を誘導する作用があると考えられているからである. 新生硬組織被蓋形成による歯髄の修復過程については初期石灰化を基質小胞に求めるもの, 異所性石灰化に求めるものなど種々の見解があり, 詳細は意見の分かれるところである. 最近, 骨折や皮膚軟組織創傷の治癒に関して細胞増殖因子の関与が多く報告され, 線維芽細胞増殖因子(bFGF)が血管新生や軟骨形成促進のような創傷治癒に関係することが明らかにされている. そこで著者は, 生活歯髄切断後の歯髄組織の創傷治癒過程においてもbFGFの関与を仮定した. 本実験では, 断髄後の新生硬組織形成過程でのbFGFの出現と役割を明らかにするために実験的にラット歯髄を切断し, 断髄面に水酸化力ルシウムを応用し, bFGFの消長および骨形成に関与するアルカリホスファターゼ活性を組織化学的に検索するとともに, カルセインとアリザリンレッドで硬組織添加部分を蛍光ラベリングし共焦点レーザー走査顕微鏡(Laser Scanning Microscope, 以下LSM)で観察した.
  • 龍田 光弘
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 79-80
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    顎関節は, 硬組織, 軟組織および流体系から構成され, さらに咀嚼筋や歯などの関連器官との連携により内部合目的性に顎関節の安定性を高めている. 咬合もこれら組織, 器官に対して重要な役割を果たしていると考えられるが, 咬合が顎機能異常に与える影響については統一した見解は得られていない. また, 顎関節部周囲軟組織の粘弾性特性に関する研究はほとんどない. 本研究では, 咬頭嵌合位における不均衡な咬合接触状態が顎関節部粘弾性特性に及ぼす影響について, 顎関節部粘弾性特性の側定を行い臨床的および実験的に検討を行った. 実験材料および方法 顎関節部粘弾性特性(粘性値: c, 弾性値: kおよび慣性値: m)の側定には顎関節部粘弾性測定装置を用い, 以下の実験を行った.
  • 木原 伸彰
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 80-81
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    咬頭干渉の生体への力学的な作用に着目し, 当該歯の動揺度や脈動, あるいは歯根膜の組織的変化から歯周組織への影響を観察した研究は数多い. しかし咬頭干渉の垂直的な高さの違いによる影響を, 干渉歯に発現する咬合力の変化からとらえたものは見当たらない. 本研究では咬頭干渉を歯の接触時の上下的偏位要素が強い垂直的咬頭干渉と下顎の側方運動を障害する要素の強い水平的咬頭干渉に分類し, そのうち垂直的咬頭干渉の高さの違いにより当該歯に加わる咬合力がどのように変化するかを観察した. さらに咬合力発現に呼応した筋電図や閉口終末位の安定性から咀嚼系の干渉に対する生理的な反応を分析した.
  • 西川 敏文
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 81-82
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    顎関節症の保存的治療方法に多く用いられるバイトプレートの作用機序には, 機械的作用として下顎頭の顎関節部への圧迫の緩和, つまり下顎頭の下方牽引効果がその一つとして挙げられている. 従来よりその効果を実験的に確証するために片側のみのバイトブロック等を装着して咬みしめたときの下顎頭変位が計則され, 有効であるとの報告も一部認められる. しかしそれらは装着側とは反対側の下顎頭が上方変位するという点では一致するものの, 装着側での変位様相についてはその結果は一様でなく, 現状では下顎頭の下方牽引効果は明らかにされていない. 演者はこれらの随意的筋収縮状態での咬みしめによる下顎頭変位について統一した条件下で, さらに他動的不随的条件下での下顎頭変位についても検討する必要があると考えた. そしてこれらの下顎頭変位について, 種々の条件を変化させて側定し, どういう条件下で下顎頭の有効な下方牽引効果が行られるかについて左右下顎頭の変位量を測定し, 比較検討した. 実験は片側プレートやピボットの咬みしめ, 片側ピボットでの徒手的挙上, マイオモニター電気刺激の3つの項目について行った.
  • 高橋 礼太郎, 大井 治正
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 82-83
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    両側大臼歯が欠損していても小臼歯部で的確な支持域が確立されていると, 咀嚼系に対する悪影響は僅少であるという報告がある. しかし片側臼歯欠損については左右の不均衡から明暗系に悪影響を及ぼすともいわれているが, 実験的に明らかにされていない. そこで本研究は欠損補綴の必要性もふまえて, 下顎片側臼歯部咬合支持欠如が下顎運動や咀嚼菌活動にいかなる影響を及ぼすかを検索することを目的とした.
  • 小川 陽一, 吉田 和也
    原稿種別: 本文
    1997 年 60 巻 1 号 p. 83-84
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
    顎関節症III型クローズドロック(復位を伴わない関節円板前方転位)症例と正常者との咀嚼筋活動の相違を明らかにすることは本疾患の診断や予後判定のために臨床的に意義があると考える. そこで本研究の目的は, 基本運動中の正常者およびクローズドロック患者の外側翼突筋上頭, 下頭および他の咀嚼筋の筋活動を観察し, 筋電図における診断基準を検討することである.
  • 原稿種別: 付録等
    1997 年 60 巻 1 号 p. 43-44
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー
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