歯科医学
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博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
平成5年の歯科疾患実態調査報告を基礎にした歯科医療需給の分析
野之口 節予
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1997 年 60 巻 3 号 p. g5-g6

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抄録

歯科医療の需給関係を明らかにする目的で, 平成5年の大阪府における齲蝕および歯周疾患の有効需要および潜在需要から求める充足率を指標として検討した。齲蝕の潜在需要は昭和32年から昭和62年までの歯科疾患実態調査をもとに計算した平成5年の推計値を引用し, 歯周疾患の潜在需要はCPITNを指標とした大阪府の歯科疾患調査結果(平成5年)を用いた。また, 齲蝕および歯周疾患の有効需要は, 大阪府下6件の歯科診療所のカルテ調査を行って求めた。齲蝕の未処置歯および欠損補綴の充足率は96.97%および34.38%であり, 末処置歯に対する歯科処置は充足されていることがわかった。一方, 歯周疾患の充足率は65.67%であり, CPITN個人コード別充足率は, 個人コード1〜4では23.42%, 個人コード2〜4では52.25%, 個人コード4では60.57%であり, 歯周疾患が重篤になるほど充足率は高かった。齲蝕の充足率に影響を及ぼす要因検索を行うために, 充足率(未処置歯, 欠損補綴)を目的変数とし, 人口, 歯科診療所数 ,国民医療費のうち歯科診療医療費の占める割合および家計調査における保健医療費を説明変数として, 重回帰分析を行った。未処置歯の充足率を目的変数とした場合, 歯科診療所数および国民医療費のうち歯科診療医療費の占める割合に有意差が認められた。また, 欠損補綴の場合, 国民医療費のうち歯科診療医療費の占める割合にのみ有意差がみとめられた。すなわち, 歯科診療所数の増加は, 未処置歯の充足率を上昇さすが, 欠損補綴の充足率に影響を及ぼさないこどが明らかになり, 欠損補綴お需要に対し現状の歯科医療が対応できないことが示唆された。このことから, 歯科医療需給問題は, 現在の人口10万対比を指標とするのではなく, 歯科診療所数からの追求が有効であることがわかった。

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© 1997 大阪歯科学会
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