歯科医学
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歯肉の粘膜骨膜弁剥離後にみる骨膜の新生血管と骨組織修復との微細形態的研究
光山 誠信藤 孝博今井 久夫
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2004 年 67 巻 3_4 号 p. 245-256

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抄録

粘膜骨膜弁剥離手術(フラップ手術)後の歯肉骨膜血管網から形成される新生血管が,術後の治癒機転において,骨膜反応として発現する骨の吸収と添加にどのような役割を演じているのかを形態学的に明らかにする目的で,血管新生から退縮までの過程の微細血管形態変化を中心に検索を進めた.本研究は,成ビーグル犬18頭の上顎前歯部頬側歯肉を粘膜骨膜弁で剥離し,術後3,5,7,14,21,28日の歯肉骨膜について,墨汁血管注入組織標本を光学顕微鏡で,またアクリル樹脂注入血管鋳型標本を走査型電子顕微鏡で,さらに超薄切片標本を透過型電顕にて観察した.術後3日では,歯肉骨膜の血管には内皮細胞の増殖像が認められた.さらに新生血管芽が超微形態的に観察され,血管鋳型でその出芽像が立体的に観察された.術後5日では,新生血管は内皮細胞間の接着が管腔側から離開した明確な管腔形態を認めた.さらに血管鋳型で,歯肉骨膜血管網の網目間隙に形成された洞様新生血管を認めた.術後7日では,歯肉骨膜血管網の網目間隙が洞様新生血管で満たされていた.これら新生血管周囲には破骨細胞によるHowship窩が認められ,血管内皮にもfenestrationを数多く認めた.術後14日では,歯槽骨表面の吸収窩に一致して糸球体様の新生血管が形成されていた.これら新生血管の内皮にはvesiculo-vacuole organelle (VVO)やcaveolaが認められ,骨芽細胞に対し高い透過性が認められた.術後21日では,新生血管の内皮細胞は徐々に断片化することによって退縮する過程を示し,血管鋳型で,新生血管数が減少していった.術後28日では,骨面は平滑化し,同時に新生血管が消失して本来の歯肉骨膜血管網形態に回復していた.以上のことより,粘膜骨膜弁剥離後の治癒初期における骨膜の旺盛な血管新生および新生血管内皮のfenestration, WO, caveolaの形成は,血流増カロと透過性亢進の機能を高める役割をしており,骨組織修復促進に対応した形態であると考えられた.

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© 2004 大阪歯科学会
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