歯科医学
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In vivoにおけるQLFによる早期う蝕診断に関する研究 : 初期う蝕病巣の定量評価について
坂本 吉史上村 参生神原 正樹
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2004 年 67 巻 3_4 号 p. 257-265

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抄録

本研究は,早期う蝕診断のために開発されたQuantitative Light-induced Fluorescence (QLF)が初期う蝕病巣の検出および定量評価に臨床的に応用可能であるのかどうかをin vivoで明らかにするとともに,初期う蝕病巣の長期的変動を把握する目的で行った.被験者は,10歳以上で,全永久歯唇(頬)側部に少なくとも1つの白斑部(初期う蝕)をもっている65名であった.なお,被験者には,実験開始時に本研究の趣旨についてインフォームドコンセントを行ったところ,すべての被験者から同意が得られた.初期う蝕は,1人の被験者につき1平均脱灰深さを表す平均蛍光強度減少度(ΔF[%]),最大脱灰深さを表す最大蛍光強度減少度(ΔMax[%]),初期う蝕病巣の面積(S[mm^2])および脱灰量を表すΔQ(ΔF×S[%×mm^2])の4つの測定パラメータについて解析した.また,初回時および1年後の各測定パラメータから,1年間の変化量(ΔF_D, ΔMax_D, ΔS_D, ΔQ_D)を算出した.実験期間は1年とし,実験開始時および1年後の2回□腔内診査およびQLF測定を行った.被験者には1年間継続的にフッ化物が含有されていない歯磨剤を用い,1日2回のブラッシングを依頼した.その結果,QLFにより,臨床での初期う蝕病巣の検出および定量評価が可能となり,病巣内部の脱灰・再石灰化の程度を示すことができた.また, QLFは初期う蝕病巣の多様な進行様相を評価することができ,初期う蝕病巣の長期的変動を臨床的に把握することができた.以上のことから,QLFの初期う蝕検出能およびQLFによる定量評価は,初期う蝕の新しい診断基準になる可能性が示唆された.

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© 2004 大阪歯科学会
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