歯科医学
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in vivoにおけるQLFによる早期う蝕診断に関する研究 : 初期う蝕病巣の1年間の追跡結果について
大塚 秀人三宅 達郎神原 正樹
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2004 年 67 巻 3_4 号 p. 266-273

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抄録

現在のう蝕診断レベルは,視診によるエナメル質の実質欠損が認められる可視的う蝕判定であリ,う蝕内部の脱灰程度が把握できず,治療対象のう蝕を検出するだけである.そして,□腔内診査の視診によって検出された初期う蝕の変化を定量的に把握できないため,う蝕予防のためのう蝕診断には至っていない.また,初期う蝕病巣の早期う蝕診断についてのin vivoによる報告はほとんどみられないのが現状である.そこで,本研究は旱期う蝕診断に必要である初期う蝕病巣のモニタリングが可能かどうかを明らかにする目的で,QLFを用いて1年間の初期う蝕病巣の経時的定量分析をin vivoで行った.被験者は,10歳以上で,全永久歯唇(頬)側部に少なくとも1つの白斑部(初期う蝕)をもっている65名であった.1人の被験者につき1つの初期う蝕を対象に, QLF測定によリ画像データを保存した.得られたQLF画像データを画像解析ソフトで,初期う蝕病巣の平均脱灰深さを表す平均蛍光強度減少度(ΔF[%]),最大脱灰深さを表す最大蛍光強度減少度(ΔMax[%]),初期う蝕病巣の面積(S[mm^2])および脱灰量を表すΔQ(ΔF×S[%×mm^2]の4つの測定パラメータについて解析した.実験期間は1年とし,実験開始時,3,6および12か月後の4回QLF測定を行った.その結果,QLFで初期う蝕病巣を経時的に追跡することにより,定量的モニタリングがin vivoにおいて可能であった.また,初期う蝕病巣のモニタリングによって,3か月後の変化状況で1年後の初期う蝕の回復あるいは進行状況が予測できる可能性が示唆された.さらに,QLFによリ初期う蝕病巣のう蝕リスク判定が可能となり,早期う蝕診断の可能性が示唆された.

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© 2004 大阪歯科学会
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